日本作物学会紀事
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59 巻, 1 号
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  • 小葉田 亨, 森脇 昇
    1990 年59 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    高見・小葉田は, 登熟期における乾物生産と粗玄米収量との関係を表わす簡易モデルを提案した。本報告では, このモデルが群落状態の水稲の比較的短期間の穀実生長に対しても適用できるのかどうかを調べた。この簡易モデルは, ある期間における地上部植物体の乾物生産量 (ΔW) と穀実増加量 (ΔG) との関係を, そのイネが圃場で実現しうる最大穀実増加量 (ΔGp) と茎葉の可動態同化産物量 (Sp) の2つの要因を介在させて表わそうとするものである。収量性の異なる2品種のイネ, 日本晴と密陽23号を水田で栽培し, 出穂から約15日毎に, 2段階の間引きと3段階の遮光を加えることで6段階にΔWを変化させ, この間のΔGを測定した。この様にして得られたΔWとΔGとの関係に, 2つの直線で表わされる関係: (1) ΔW≧ΔGp-ΔSpの時, ΔG=ΔGp, (2) ΔW<ΔGp-ΔSpの時, ΔG=ΔW+Sp;を, 登熟初・中・後期別にあてはめると全体的によく適合した。ここで, ΔGpは処理区中の平均籾重の最大増加量と着生もみ数の積から, Sp, はΔG<ΔGpとなった全ての処理区の茎葉部重の減少量の平均から推定した。この事から, 乾物生産がある一定の大きさ以上に増加すると, もはや穀実生長速度は増加せず, 過剰の同化産物が茎葉に蓄積すること, 乾物生産速度がある一定以下に低下すると, 茎葉の可給態同化産物が穀実生長速度を維持するために重要になることが分かった。このある一定の乾物生産速度とは最大穀実増加量と茎葉可動態同化産物量の差によって表わせる。さらに, ΔWとΔGとの関係を品種, 登熟時期の間で変えている要因ΔGp, Spを除き, 相対化して表わすとほぼ一つの曲線で表わせた。以上から, 本モデルによって, 水田圃場におけるイネの比較的短期間における穀実の乾物増加速度を乾物生産速度によって精密に表わせることがわかった。本モデルはシンク, ソース制限の観点からの収量解析の他に, 穀実収量予測のためのサブモデルとしても用いることができよう。
  • 山本 由徳, 池内 浩樹
    1990 年59 巻1 号 p. 8-18
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポットに1株1本立で直播した水稲主稈の第2節から第11節の範囲で特定の節位に分げつを1節あるいは2, 3, 5節組み合わせて残存させ, それ以外の節から出現する1次分げつを毎日除去して生育させ, 主稈の節位別分げつの子実生産力に及ぼす1次分げつ出現節数および節位の影響について検討した。1) 1次分げつ残存節数が少なく, 残存節位が上位の区ほど主稈葉数が多くなり, 主稈穂重は優った。2) 1次分げつの出現日および出現率は第6節までは分げつ残存節数および残存節位の影響を受けなかったが, それ以上の節位では下位節に出現節数の多い区ほど出現日が遅れ, 出現率も低下する傾向がみられた。また, 下位節の1次分げつほど出現から出穂まで日数あるいは止葉葉数は多くなったが, 穂重との間に明瞭な関係は認められなかった。3) 主稈の節位別分げつ穂重 (子実生産力) は, 一般に穂数の差により下位節ほど優るが, ある特定節位の分げつの子実生産力については1次分げつの出現数の多少, および他の1次分げつの出現節位によって著しく変化するものと考えられた。すなわち, 主稈第n節分げつの子実生産力は他節からの分げつ出現数が少なく, さらに分げつ出現節数が同一の場合には, 第n節位より上位に他節の分げつが位置するほどその子実生産力は大となった。4) 主稈の中, 上位節にのみ1~2節とごく少数の1次分げつが出現すると, 高次分げつの割合が高くなり株当り穂数は対照 (無処理) 区に比べて減少した。しかし, 平均1穂重は主稈および各次位別分げつとも対照区を上回り, 株当り穂重の低下はわら重に比べて小さくなり, その結果穂重/わら重比は向上した。
  • 宋 祥甫, 縣 和一, 川満 芳信
    1990 年59 巻1 号 p. 19-28
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中国産ハイブリッドライス (F1ライス) の多収性要因を物質生産的視点から明らかにする第1歩として, 中国浙江省において各時代の主役となったインド型普通稲の在来品種, 旧改良品種, 新改良品種の中から主要なものを比較対象に, F1ライスの乾物生産特性を生長解析, 群落構造解析を中心に検討した。F1ライスの玄米収量は在来品種の約2倍, 新改良品種の1.1-1.54倍の増収を示した。その要因として収穫指数の向上よりも全乾物重の増大効果が大きかった (第2表) 。F1ライスにおける全乾物重の顕著な増大は生育期間の長さよりも平均CGRの高いことによる効果が大きく, 出穂期前30日間の平均CGRは30 g/m2/dayに達した。この高いCGRはNARよりも全生育期間にわたる大きいLAIによって支持された結果であった (第3表) 。F1ライスの高いCGRと大きいLAIは, 高い草丈 (稈長) と1茎当り稲体が大くて重いことによって形成される強靱で, しかも受光態勢の良い群落構造に負うところが大きかった (第5図) 。F1ライスの群落吸光係数は小さく, 葉の垂直分布はピラミッド型で上層から下層まで広い範囲に分布する草型を示した。F1ライスの個葉光合成速度は普通稲品種に比べて大差がなく, 各生育段階ともほぼ同じ値を示した。以上から, F1ライスの多収性は稈が強健で光利用効率が高い群落構造を長期にわたり維持することによって物質生産を活発にしバイオマスを大きくすることによって実現されたと結論される。
  • 宋 祥甫, 縣 和一, 川満 芳信
    1990 年59 巻1 号 p. 29-33
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中国産ハイブリッドライス (F1ライス) の多収性要因を明らかにするため, 前報で供試した同一品種を対象に, 収量構成要素の解析と玄米収量を構成する同化産物の由来源を中心に検討した。総穎花数と玄米収量との間には高い正の相関関係があり, F1ライスの多収性は普通稲品種に比べて格段に多い総穎花数に由来していることが明らかになった (第1表, 第1図) 。F1ライスの総穎花数はその構成要素からみて1株穂数より1穂穎花数が著しく多いことに由来していた (第1表) 。F1ライスは穎花数が多い割合には高い登熟歩合 (80%) を示したが, これは登熟期間中のソース (LAI) とシンク (穎花数) の比が在来品種を除く普通稲品種に比べて大きいことが一つの要因と考えられた (第2表) 。玄米収量は出穂期前に蓄積された同化産物と登熟期間中の光合成産物によって決定されるが, 前者と玄米収量との間には高い正の相関関係が認められた (第3図) 。F1ライスの玄米収量は蓄積同化産物からの転流分に依存する割合が普通稲品種に比べて大きく, これが登熟歩合向上のもう一つの要因と考えられた。以上から, F1ライスの多収性は総穎花数が多いことに集約されるが, 穎花数が多いにもかかわらず登熟歩合が落ちなかった原因として, 穎落数に釣り合ったLAIが登熟期間中維持されたこと, 出穂期前に蓄積された同化産物の転流分に依存する割合が多かったことによると結論される。
  • 梅崎 輝尚, 松本 重男
    1990 年59 巻1 号 p. 34-39
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では, 接触処理がダイズの節間伸長に及ぼす影響を明らかにするため, 九州地方の秋ダイズ品種フクユタカを供試し, ハタキを用い茎頂部を軽く撫でることによる処理の影響を調べた。ダイズの節間では接触刺激により伸長抑制がみられ, 花芽分化期から開花期までの処理で最も効果が大きかったが, 刺激に対する反応は直接刺激を受けた節間に限られた。また, 収量形質にはほとんど影響が認められなかった。一方, 処理強度については, 本実験で設定した15-180秒の範囲では, 刺激を受けた時間が長いほど抑制効果は大きかった。子葉節と初生葉節の間で摘心を行い作出したY-shaped plantを用いた実験では, 抑制効果は処理を受けた分枝においてのみ認められた。以上のことから, ダイズの節間伸長に及ぼす接触処理の影響についてみると, 生殖生長に副次的な悪影響を与えることなく伸長を抑制し, その効果は刺激を受けた時期・部位に限られ, 処理強度 (処理時間) が大きいほど大きいことが明らかとなった。
  • 山本 由徳, 久野 訓弘
    1990 年59 巻1 号 p. 40-47
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の移植に伴う植傷みの発現と回復過程について, 同一条件下で育成した非移植苗との比較により検討した。1) 移植に伴う断根率は乾物重で18%であったが, 外観的な葉身の萎凋は認められなかった。しかし, 移植後3日目頃までの葉身の含水率は非移植苗に比べて低く推移し, それに伴い葉身および分げつ芽の伸長速度は低下して植傷みが発現した。2) 移植に伴い地上部の生長が抑制されると, 非移植苗に比べて苗の炭水化物含有量および含有率が増加し, 窒素含有量および含有率は低下した。この苗体内の炭水化物の増加は, 主に全糖によるものであり, 地上部では茎>葉鞘>葉身の順に増加割合が大きかった。3) 移植後1日目の根の全糖の増加割合は地上部に比べて小さく, 同化産物の根への転流が一時的に抑制されたことが推定された。しかし, その後は根への乾物分配率が増加して, 地上部の生長抑制とは対照的に, 移植直後の発根数は非移植苗に比べて優った。4) 上述の植傷み発現に伴う苗体内の成分含有量 (率) の著しい変化は, 新根の発生・伸長による地上部の生長速度の回復とともに急速に非移植苗の値に収れんする傾向がみられた。5) 以上より, 水稲苗の移植に伴う地上部の一時的な生長の抑制は, 苗の炭水化物含有量を増加させて, それを新根の発生・伸長に優先的に分配して, 活着を促進させる意義を有しているものと考えられた。
  • 伊藤 浩司, 村田 吉男, 武田 友四郎, 星野 正生, 大久保 忠旦, 宮城 悦生, 沼口 寛次, 稲永 忍
    1990 年59 巻1 号 p. 48-55
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    既報のように, 関東以南の地域におけるネピアグラス (Pennisetum purpureum) の品種メルケロンの植付け当年の乾物生産力は必ずしも南の地域ほど大きいという傾向は見られなかった。その理由を解明する一助として, 上記の結果を得た研究のデータを用いて, 地上部各部の乾物収量の経時的変化並びに地域差を検討した。経時的変化は東京と宮崎における調査結果により, また, 地域差は, 東京, 名古屋, 福岡, 宮崎, 那覇及び西表島の6カ所における調査結果により検討した。いずれも, 5月上, 中旬に7-10葉期の分げつを植付け, 10月下旬-11月下旬の各地域の年内生産終期までの期間にわたり, 比較的多肥の条件下で栽培し, 栽培中途の刈り取りを行なわない区 (1回刈り区) と8月上, 中旬に中間刈り取りを行なう区 (2回刈り区) とを設けた。葉身, 稈 (葉鞘を含む) 及び枯死部の乾物重増加速度はいずれも, 北の地域の方が6月下旬までは劣ったが, 7, 8月における速度は逆となった。他方, 9月以後の葉の枯死速度は北の地域の方が小さかった。このような生長の経過により, 1回刈り区の葉身収量は南の地域ほど小さく, 稈及び枯死部の収量は, 2回刈り区の1番草の各部の収量とともに, 生育日数及び気象条件の地域差に関連した地域差を示さなかった。しかし2番草の葉身及び稈の収量は南の地域ほど大きい傾向がみられた。葉身収量及び収量の稈/葉身比からみた生産態勢及び飼料としての品質は, 1番草を除き, 南の地域ほど劣り, また, 2番草に比べて1回刈り区の方が劣った。
  • 萩原 素之, 井村 光夫, 三石 昭三
    1990 年59 巻1 号 p. 56-62
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の湛水土壌中直播法において, 種籾近傍の土壌ははじめ酸素発生剤で酸化されるが発芽するころからは急激に還元される。この現象は出芽・苗立ちの不安定性と関連が深いと考え, 酸素発生剤として過酸化石灰剤を被覆した種籾 (被覆籾) の近傍の局所的土壌還元の進行経過と発芽・出芽との関係を調査した。(1) 被覆籾近傍の還元は発芽力がない被覆籾では緩やかだが, 発芽力のある被覆籾では急激で, 発芽した場合には一層促進された。また, 還元は発芽と同時期ないしそれよりやや早く, 胚の付近から始まり拡大した。以上のことから, 発芽は被覆籾近傍の局所的で急激な還元の主因とはいえないが, 一因と考えられた。(2) 被覆籾近傍の還元が発芽を阻害する可能性は小さいと考えられた。しかし, 発芽日およびその翌日の被覆籾近傍の還元程度がある限界を越えると出芽率が大きく低下することから, 被覆籾近傍の還元は水稲の湛水土壌中直播法における出芽率低下の有力な原因と考えられた。(3) 現行の過酸化石灰剤の効果を改善し, 発芽後数日間の被覆籾近傍の還元を抑制すれば, 出芽の向上だけでなく, 安定化も図れる可能性がある。
  • 江幡 守衛, 田代 亨
    1990 年59 巻1 号 p. 63-71
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの脱粒性の難易と脱離部の形態との関係を調べ, 離層崩壊の品種的差異を走査型電子顕微鏡で観察した。離層は小穂軸と小枝梗の接点に形成され, 両者の組織は大きさ, 配列が異なり, 脱離面は小穂軸側では凹面 (脱離孔), 小枝梗側では凸面 (脱離円蓋) をなす。脱粒抵抗強度と脱離面, 維管束, 小枝梗などの太さとの相関関係は必ずしも高くないが, 脱離円蓋の高さとは負の, 脱離角度とは正の高い相関関係を示した。離層は若い穎果では分離せず, 成熟に伴い周辺部から内部に向い分離が進む。内護穎側では分離が顕著で, 厚壁繊維組織の発達は弱い。脱粒易品種では離層部で脱粒し, 成熟や脱水により分離が助長され脱粒抵抗強度も低下する。脱粒難品種では離層形成は弱く, 小枝梗折損型の脱離を示し, 成熟や脱水でかえって脱粒抵抗強度が高められる。弱勢穎果は強勢穎果に較べ脱離部の形態的発達は劣るが, 離層の分離はよく, 脱粒抵抗強度は小さい。しかし脱粒難品種では小枝梗折損型脱離の割合が高い。離層細胞の細胞壁は周辺部ほど薄く, 崩壊し易い。脱離部中央の維管束鞘外側には離層形成の微弱な厚壁繊維組織が発達し, この発達は脱粒難品種ほど顕著である。離層細胞と離層細胞に接する細胞とは壁孔によって連絡しているが, 壁孔の密度は脱粒難品種ほど高い。野生稲では離層形成が維管束鞘部にまで及び, 厚壁繊維細胞の発達は極めて弱いことが高脱粒性の要因と考えられた。一般に脱粒性の難易は離層と繊維組織の相対的な発達程度に支配され, 脱粒難品種では厚壁繊維組織の機械的強度によるものと思われる。
  • 中沢 文男, 角田 公正, 鳥倉 弘文
    1990 年59 巻1 号 p. 72-79
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本型品種むさしこがね, アケノホシ, 日印交雑型品種水原262号, インド型品種南京11号, RP 9-3の計5品種を用い, ポット栽培したイネについて生育の主要時期に人工照明下で個葉の光合成速度を測定するとともに, 2, 3の形質との関係を検討した。低照度 (10 klx) 下の光合成速度には最高分げつ期から出穂期まで品種間でほとんど差がみとめられず, また, いずれの品種も, 登熟期に入ってからの低下が著しかった。高照度 (60 klx) 下では, 生育ステージの推移に伴い光合成速度は低下した。日本型品種は最高分げつ期に高く, 日印交雑型品種は穂ばらみ期で高い光合成速度を示し, インド型の南京11号は日本型に近い値を示した。各生育時期を通して常に高い値を示したのは水原262号であり, 日本型より高い光合成能力を持つ品種であると思われた。各品種とも移植後日数の経過に伴い呼吸速度の低下が認められたが, 一般的に日本型品種と日印交雑型品種で高く推移し, インド型品種で低く推移する傾向が認められた。高照度下における光合成速度と葉緑素含量との間には高い正の相関関係が認められた。
  • 楠田 宰
    1990 年59 巻1 号 p. 80-88
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    標本調査における標本数は, 調査対象形質の変動係数と目標精度から算出することができる。しかし, 水稲の量的諸形質の変動係数は十分に明らかにされていない。そこで, 水稲圃場試験で標本調査による各種調査を行う場合に必要な標本数を明らかにするために, 最高分げつ期, 穂揃期および成熟期における量的諸形質の変動係数を3カ年にわたり種々の栽培条件下で調査した。なお, 調査の対象としたのは, 栽培試験で一般的な1株植付け本数を一定とした手植え水稲である。量的諸形質の変動係数の, 年次, 圃場, 作期, 品種, 植付け条方向の違いによる差は, 栽培管理がよほど粗雑でない限り小さく, これらの栽培条件が異なっていても標本数に大差はないと判断された。ただし, 変動係数の, 栽植密度の違いによる差は無視できない大きさであった。そこで, 標準的な栽植密度で栽培した水稲について, 最高分げつ期, 穂揃期, 成熟期の生育時期別に, 量的諸形質の母変動係数の99%信頼区間の上限値を調査結果から推定し, 解析に用いる変動係数とした。この値を用いて, 目標精度を許容誤差率5%・信頼水準68%, 許容誤差率10%・信頼水準68%, 許容誤差率5%・信頼水準90%, 許容誤差率10%・信頼水準90%, 許容誤差率5%・信頼水準95%, および許容誤差率10%・信頼水準95%とした六つの場合について, 目標精度を達成するのに必要な標本数を算出した。この標本数をランダム抽出して調査すれば, それぞれの場合における目標精度を理論的に満たした標本平均値を得ることができる。
  • 間脇 正博, 森田 茂紀, 菅 徹也, 岩田 忠寿, 山崎 耕宇
    1990 年59 巻1 号 p. 89-94
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の幼穂形成期から出穂期にかけての期間に, 人為的に遮光処理 (遮光率22%) を行い, 根の長さ・分布と収量への影響を根長密度に着目して解析した。品種コシヒカリを供試し, 福井県農業試験場圃場 (細粒強グライ土壌) で栽培した。収穫直前に遮光区と遮光しなかった対照区において株下および株条間 (相互に隣接する4株の中央部分) から, ステンレス製の円筒を用いて, 深さ30 cmまでの根を採取し, 土層別にルートスキャナーで根長を測定し, 根長密度 (単位土壌体積中に存在する根の総長) を算出した。遮光処理により, とくに一穂籾数が強い影響をうけ, 登熟歩合, 千粒重にも影響が及び収量は約10%減少した。根長密度は株下, 株条間の両部位とも表層から深さ20 cmまでの各層で遮光区が対照区より小さく, とくに, 株下の5~10 cm, 株条間の0~5 cm, さらに株下, 株条間の15~20 cmの層で顕著な減少がみられた。なお, 20 cm以下の層では差がみられなかった。根長密度の値を利用して10 a (深さ30 cmまで) 当りの総根長を推定したところ, 対照区で49,200 km, 遮光区では38,100 kmとなり, 遮光区が対照区より20%以上短くなっていた。以上の結果から, 処理期間の日射量は水稲の収量, 根系形成に著しい影響を及ぼすことが明らかにされ, 根の量的形質と収量形質との密接な関連性が示唆された。
  • 間脇 正博, 原田 二郎, 岩田 忠寿, 山崎 耕宇
    1990 年59 巻1 号 p. 95-99
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    第1報と同様, 幼穂形成期から出穂期にかけて人為的に遮光処理 (遮光率22%) を行った水稲において, 1次根の数, 種類, 類型および伸長方向の変化を解析した。遮光処理は, 有効茎の構成および総数には影響を及ぼさなかったが, 1株当り, 1茎当りのいずれの場合についてみても, 伸長根およびいじけ根の数をともに減少させ, その結果, 総根数は対照区より1割程度減少した。この場合, いじけ根の減少率がとくに大きかった。要素別にみると根数の減少は処理後に出根・伸長する第11要素および第12要素の1次根で顕著に認められ, 第11要素ではいじけ根, 第12要素では伸長根およびいじけ根の数がそれぞれ減少した。第11, 12要素の伸長根を類型別にみると, その数および比率ともに, A型根が減少し, C型根が増加する傾向を示した。また, 伸長根の伸長方向には遮光処理による影響は認められなかったが, 各伸長方向にわたって平均的に根数が減少する傾向が認められた。本研究の結果, 水稲の収量と生育後期に形成される高位要素の1次根の数および形態が密接に関係していることが示唆された。
  • 前田 和美
    1990 年59 巻1 号 p. 100-106
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    休眠が覚醒したラッカセイ品種Chicoの莢つき種子による圃場栽培で2粒莢から1個体しか出芽しない"1本立ち出芽"現象が多く発生した。この現象を種々の播種条件で再現させた結果, 莢果内で莢殻が薄くて裂開しやすい位置にあり, 基豆よりも休眠が弱い先豆が早く発芽し, 浅播 (2 cm) や覆土圧が小さい場合, 出芽する際に莢殻がその子葉や基豆を閉じ込めたまま地上に出て, 遅れて発芽 (根) した基豆を乾燥, 枯死させるために起こることがわかった。休眠性がやや強い大粒性品種のタチマサリやワセダイリュウの莢果が圃場で成熟後に自然出芽する場合にも同じ現象が起こることを確認したが, その場合には莢殻は地表下に留まっていた。品種Chicoでも自然の結実とほぼ同様に深さ5 cmで, 向軸側を上にして莢果を水平に播種し, 覆土後, 加圧すると"1本立ち出芽"が起こったが, 莢殻は地中で元の播種位置に留まっていた。これらの結果から, ラッカセイには自然条件で, 莢殻の組織的構造と1莢果内での種子間の休眠の強さの差異によって先豆を優先的に発芽, そして出芽させる機構があり, 莢つき種子の浅播や覆土圧が不足する場合に"1本立ち出芽"が多発すると考えられる。この機構は, 母株の周囲の限られた範囲内に地下結実した多数の種子が同時出芽することにより生ずる種内個体間競争の激化を自己調節する機構であるとも考えられる。
  • 宋 祥甫, 縣 和一, 川満 芳信
    1990 年59 巻1 号 p. 107-112
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の子実生産は, 出穂期前に稈・葉鞘部に蓄積された非構造性炭水化物 (NSC) と出穂後の葉身光合成による同化産物とによって決まることから, 本報ではそれぞれの指標となる茎葉中のNSC%と葉身窒素濃度 (N%) の動態に注目して, F1ライスの多収性を検討した。F1ライスの葉身中のNSC%は普通稲品種に比べて大差はなかったが, 稈・葉鞘部では顕著に高かった。各品種とも出穂後NSC%は急減したが, 普通稲品種では登熟期後半に再び高まった。これに対してF1ライスは登熟末期まで減少を続け, その減少率も大きかった (第1図)。出穂期から登熟末期にかけてのNSC%の減少と稈・葉鞘部から子実への乾物の転流分との間には高い正の相関々係が認められた (第3図)。また, 玄米収量との間にも高い正の相関々係がみられた (第4図)。これらの結果は, 子実への転流の主体はNSCであること, 稈・葉鞘部のNSC%は玄米収量と密接な関係にあることを示し, F1ライスの多収性は高いNSC%に負うところが大きいことが示唆された。各品種とも葉身のN%は稈・葉鞘部に比べて高く, 生育段階が進むにつれて減少した。F1ライスの N%は葉身, 稈・葉鞘部とも普通稲に比べて低く, 減少割合も小さかった (第5図)。葉身のN%と玄米収量との間には, F1ライスを除いた場合, 両者間に有意な正の相関々係が認められた (第6図)。以上の結果から, F1ライスの子実生産は普通稲品種に比べて, 出穂期前に稈・葉鞘部に蓄積された炭水化物に依存する割合が大きいことが明らかになった。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻1 号 p. 113-119
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    個葉光合成速度 (CER) の経時変化のパターンは葉位により異なった。第2, 3葉 (上から数えて) では, 飽和光下のCERは完全展開期に最高でありその後時の経過とともに低下した。止葉のCERは展開時にはかなり低かったが, その後急増し2週間後には始めの値の約2倍に達した。その後は, 他の葉位の葉におけると同様低下した。止葉のCERの初期における増加は, 主に気孔伝導度 (gs) の増加によりもたらされ, 葉肉の光合成活性の上昇も副次的にそれに関与していた。後期のCERの低下はすべての葉でみられ, これをもたらした主要因は葉肉の光合成活性の低下, 副次的要因はgsの減少であった。第2, 3葉では, 光-光合成曲線の初期勾配は展開時に最大でその後減少した。止葉の場合, この勾配は展開時には小さかったが, いったんかなり増加し, その後減少に転じた。この増加と減少の幅は, 第2, 3葉における勾配の変動幅に比べずっと大きかった。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻1 号 p. 120-124
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    個葉光合成速度 (CER) は, 個葉の外囲空気を一時的に加湿する処理によりつねに上昇した。このことは, 湛水条件下においてさえCERが常習的に水不足により低下させられていることを示唆する。そこで, この処理によるCERの増加程度をもとにして, いろいろな時刻および開花後日数における水不足によるCERの低下程度をみつもった。止葉のCERの処理による増加の程度は時刻の進みおよび開花後の日数の進みに伴い増加し, その変動幅は開花期の午前の5%から完熟期の午後の40%の範囲にあった。上述の結果から, 水不足による光合成抑制の程度は時刻が進むにつれて, また, 開花後日を経過するにつれて増加すると結論された。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻1 号 p. 125-129
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    著者らは, さきに, 個葉光合成速度 (CER) の個葉間変異および時刻の進みに伴う低下が気孔伝導度 (gs) の変動と密接な相関を示すことを報告した。しかし, gsが葉肉の光合成活性と並行的に変化する場合には, たとえ葉肉の活性がこの種のCERの変動の主要因であるとしても, gsとCERとの間には密接な正の相関が成立しうる。このような場合には, あたかもgsがCERの変動をもたらす唯一あるいは主要な要因のようにみえるであろう。本研究の目的は, 葉の外囲空気の加湿処理が葉肉の光合成活性に影響せずgsだけを増加させるとの仮定に立ち, CERの上記のような変動に対するgsの真の貢献度を評価することである。結論は次の通りである1) 止葉におけるCERの個葉間変異の半分は真にgsの変異によりひきおこされ, 残りの半分はgsと並行的に変動するところの葉肉の光合成活性の変異によりもたらされる。2) 時刻の進みに伴うCERの低下は主にgsの低下によりひきおこされるが, 若干の部分は葉肉の光合成活性の低下にもとづく。
  • 斎藤 邦行, 下田 博之, 石原 邦
    1990 年59 巻1 号 p. 130-139
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多収性が広く認められている日印交雑品種密陽23号と日本晴を用いて, 5ケ年にわたって, 収量および乾物生産特性の比較を行ない, その相違する要因を個体群構造, 吸光係数で示される受光態勢から解析した。密陽23号は日本晴に比べて1穂頴花数が多いことによりm2当り頴花数が多く, 収量, 乾物生産量は5ケ年を通じ常に日本晴よりも大きかった。天候の良い1984年の密陽23号の収量は754 g/m2となり, 日本晴よりも184 g/m2, 32%多収であった。密陽23号の乾物生産量が常に大きい要因を生長解析を通じて検討したところ, 密陽23号の個体群生長速度 (CGR) は日本晴に比べ出穂期以後に大きくなり, これは平均葉面積指数の割合に密陽23号の純同化率 (NAR) が大きいことによることが認められた。密陽23号の吸光係数は日本晴に比べて出穂期以降小さくなり, この吸光係数の相違には出穂期以降日本晴に比べ密陽23号で垂直に近い葉身が多いこヒ, および穂による遮光の程度が小さいことが関係していた。なお, 個体群内の光強度の日変化から求めた吸光係数は朝夕大きく, 日中小さくなったが, この日変化の傾向に両品種間で相違が認められたのも出穂期以降であった。さらに, 登熟初期に認められた密陽23号のNARについての優位性は, 株間引きを行い受光態勢の影響を少なくした条件の下では認められず, 両品種間の相違は著しく小さくなった。このことから, 出穂期以後日本晴に比べ密陽23号のCGRが大きいことには, 受光態勢が大きく影響していることを推察した。
  • 一井 眞比古, 中村 雅彦
    1990 年59 巻1 号 p. 140-145
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    12 F1雑種およびそれらの両親6品種からなる18系統 (品種を含む) のイネ (Oryza sativa L.) を供試し, それらの25日苗における養分吸収能力, とりわけNH+4-N, NO-3-N, PおよびK吸収速度 (mg・plant wt g-1・h-1) に着目し, F1雑種植物におけるヘテロシスの発現について検討した。結果の概要は以下のとおりである。(1) 植物体の大きさに係わる形態形質ではヘテロシスがほとんど認められなかったが, いずれの養分要素の吸収速度においてもきわめて大きなヘテロシスが認められた。(2) 吸収速度はK, NH+4-N, NO-3-N, P の順に小さくなり, KではPの5倍以上の吸収速度を示した。このような関係はF1雑種または両親品種のいずれにおいても同じであった。(3) 吸収速度におけるヘテロシスはNO-3-N, P, NH+4-N, Kの順に小さくなり, 最も大きいNO-3-Nのヘテロシス程度は約80%, 最も小さいKで約30%であり, 養分要素によってヘテロシスの大きさが著しく異なった。(4) 吸収速度のヘテロシス程度と植物体重および植物体重のヘテロシス程度との相関はいずれの養分要素においても有意でなかった。(5) NH+4-N吸収速度とK吸収速度間, および両吸収速度におけるヘテロシス程度間の相関は有意で, かつ正であった。(6) 以上の結果は, 養分吸収能力のような生理形質におけるヘテロシスが形態形質におけるヘテロシスに先行して現れること, 並びに養分吸収能力におけるヘテロシスはF1雑種植物の大きさとは無関係のF1雑種固有の高い生理活性に依存することを示唆している。
  • 岩間 和人, 吉永 優, 久木村 久
    1990 年59 巻1 号 p. 146-152
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    カンショの挿苗栽培に比較して種子まき栽培では低収である理由を明らかにするために, 交配親を異にする種子播き6集団と挿苗2品種における地上部と塊根の生長を調査した。種子播き集団間では収量が大きく異なり, 種子播き集団の一つは多収の挿苗品種に類似した収量を示した。供試材料間の収量の差異は8月下旬から10月中旬の期間の乾物生産量の差異に主として起因し, これは葉の効率, すなわち全乾物重の増加量/平均葉乾物重の差異の影響を強く受けた。さらに, 葉の効率は8月下旬における塊根重歩合 (塊根乾物重/全乾物重) の高い供試材料で高い傾向を示したことから, 8月下旬の塊根重歩合と収量との間に密接な相関関係が認められた。以上の結果から, 種子播き栽培の初期生長の促進を図る栽培法を用いた場合, 優れた種子播き集団では多収の挿苗品種に類似した収量が得られるものと推察した。さらに, 種子播き集団間では塊根のシンク能力に大きな差異があり, これが塊根肥大後期の葉の効率ならびに乾物生産, さらには収量を主として規制していることが示唆された。
  • 徐 会連, 石井 龍一, 山岸 徹, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻1 号 p. 153-157
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究の前報まで, 土壌水分欠乏による光合成の低下程度は植物体の部分によって異なることを報告した。本報では光合成機構に及ぼす土壌水分欠乏の影響を調べるために, 気孔の影響のない条件下の光合成 (Non-stomatal mediated photosynthesis, NSP) を, 酸素電極法により測定した。NSPに及ぼす土壌水分欠乏の影響を部分別に見ると, 老化が進んだ第3葉葉身が最も大きな影響を受け, 穂への影響が最も小さかった。茎, 葉鞘, 止葉はほぼ両者の中間であった。つぎに, NSPと最も関連が深いと考えられるCO2固定酸素, RuBPカルボキシラーゼ (RuBP Case) 含量を調べた。その結果, RuBP Case含量の土壌水分欠乏による低下も, ほぼNSPの傾向と対応していた。ただし, 穂において, 土壌水分欠乏によるRuBP Case 含量の低下程度は光合成の低下程度に比べて, 大きかった。
  • 徐 会連, 石井 龍一
    1990 年59 巻1 号 p. 158-161
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    土壌水分欠乏による気孔の閉鎖には, 水ストレスにより蓄積するアブシジン酸 (ABA) が関与しているとされている。そこで, 土壌水分欠乏に対する光合成の反応の植物体部分間差の原因を解明するため, 外与ABAに対する気孔の反応を, 植物体各部分で調べた。ABA散布1時間後の光合成と蒸散速度は, 葉身, 茎および葉鞘において大きく減少したが, 穂では非常に小さかった。このことから, 穂の光合成が水ストレスに対して強いのは, ABAに対する反応が小さいためと思われた。さらに, 気孔の影響が除去された光合成に及ぼすABAの影響はほとんど認められなかったことから, ABAの光合成に対する影響の植物体部分間差は, 主に気孔のABAに対する反応を通じて起こるものと考えられた。
  • 岡田 謙介, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻1 号 p. 162-168
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根流出有機物の定量には, 根自身の呼吸と, 根面あるいは根圏微生物の呼吸を分離測定することが不可欠である。この方法を確立するにあたって, 少量の切断根 (生体重約1 g) の呼吸を簡単かつ迅速に測定する方法が必要であったので, これを開発した。プラスチック注射器を呼吸室としてそのなかに根を入れ, 中の空気を一定CO2濃度の空気で置き換えたのち, 密閉して定温下に置く。そののち, 中の空気の一部を赤外線ガス分析計に接続したビニール管の中に注射する。ビニール管のなかにはN2ガスを一定速度で流しておく。注射後に分析計の出力が示す山型の高さは, 注入空気のCO2濃度と直線関係にあったので, それから注射器内のCO2濃度が求められる。注射器内のCO2濃度の, 根密閉以前に比べての上昇から, 根の呼吸速度を計算できる。測定手続の各ステップにおける諸要因の影響につき検討し, その結果をもとに, 測定手順の細部を定めた。
  • 山岸 順子, 秋田 重誠, 高梨 純一
    1990 年59 巻1 号 p. 169-173
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    同一条件下で栽培した14種の植物の呼吸によるCO2放出速度を経時的に測定し, 呼吸の種間差について検討した。さらに, 数種について, 水分欠乏あるいは湛水条件が呼吸におよぼす影響について検討を加えた。呼吸速度は5種 (全てC4植物) で他の9種 (C4植物3種, C3植物6種) よりも比較的高かったが, 呼吸速度の経時変化は用いた全種においてほぼ等しく, 暗期開始後低下するが, その後一時的に上昇し, 暗期開始8-12時間後に再び低下開始し, 以後低下し続けた。水分欠乏と湛水条件は呼吸の経時変化に対し強くかつ直ちに影響をおよぼした。夜間の呼吸の一時的上昇はいずれの条件下でも一日のうちに消失した。また, 湛水条件に弱い植物では, 7日間の湛水処理により暗期開始後8-12時間後に開始する呼吸速度の低下もみられなくなった。以上より, 用いた全種において呼吸によるCO2放出の経時変化に関係する体内要因が共通のものであること, および, 呼吸は水分条件に対する植物の生長反応を敏感にかつ直ちに反映することが結論された。
  • スアルナ I.M., 小合 龍夫, 土屋 幹夫, ニティス I.M., ラナ K.
    1990 年59 巻1 号 p. 174-178
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    インドネシアの季節的乾燥地域, とくにバリ島のブキ半島等では, バリ牛の飼育を中心とした農業が営まれているが, 乾季の飼料確保には著しく苦慮している。そのため, 乾季には, 約30 kmも離れた山野に自生する在来野草, 木本類の枝葉を採取, 供給している現状にある。そこで, 乾季の飼料供給源を畑に隣接して設けた「Three Strata Forege System」による飼料と食用作物の圃場生産様式を提唱し, 従来通り, 周囲に垣根としてサボテン類のみを植えた同一面積の圃場との, 飼料および作物の生産量, 牛体重の増加, および年間収益の比較によって, その有用性を検討した。この生産様式は, 圃場の周囲に飼料となり得る樹木類および潅木類を垣根状に植え, その内縁には牧草類を帯状に作付し, 中央部には換金を目的とした作物類を混作するもので, 作物の茎葉部も乾季の飼料として利用される。その結果, 圃場当りの作物収量は作付面積の減少により35%低下したが, 飼料生産量は96%増加し, 一年間を通じた飼料の供給が可能となった。また, この様式で生産できる飼料では, 供給量が約10%少なくても牛体重の増加には差異がなく, 年間収益においても, 約24%の増収となり, 本圃場生産様式の有用性が明確になった。
  • 前田 英三, 前田 和子
    1990 年59 巻1 号 p. 179-197
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの開花直後の子房を化学固定し, 樹脂に包埋した。卵装置を構成している卵細胞と助細胞の配置を, 透過型電子顕微鏡を用いて観察し, 細胞相互の位置関係を明確にした。二個の助細胞が背側維管束側に, 二本の雄蕊を含む面と平行に列んで配置されており, 卵細胞はこの二個の助細胞に接して腹側に位置している。花粉管が一方の助細胞に侵入すると, この助細胞の原形質膜が消失し, 線形装置に近い基部の細胞質から崩壊しはじめ, 先端部の細胞質は, 卵細胞と花粉管が侵入しなかった助細胞とを包みこむように生長し, 卵細胞の上に直接かぶさるように, 中央細胞の原形質膜と卵細胞の原形質膜との間に配置される。卵細胞と花粉管が侵入しなかった助細胞の間にも, また, この助細胞から離れた反対側の卵細胞と中央細胞との間にも, 退化助細胞の細胞質が薄層となってみられた。卵細胞の核は二つの明瞭な仁をもち, 細胞の中央に位置し, 核の周辺にミトコンドリアや澱粉粒を含むプラスチドなどが見られ, 核から離れた位置に小液胞が存在した。花粉管の入らなかった助細胞では, 上部に多くの小液胞が見られ, 線形装置と接する側に細胞質が多く認められた。この細胞質内には助細胞の核が長く伸長し, 助細胞の原形質膜に接して存在し, 核の表面の一部に陥入が認められた。
  • 箱田 寛子, 井之上 準, NG N. Q.
    1990 年59 巻1 号 p. 198-199
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 渡部 富男
    1990 年59 巻1 号 p. 201-205
    発行日: 1990/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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