日本作物学会紀事
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ネピアグラスのメタン生産原料としての利用性
伊藤 浩司大井 進武田 友四郎大久保 忠旦星野 正生宮城 悦生沼口 寛次稲永 忍外山 信男永井 史郎村田 吉男山本 武彦
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1990 年 59 巻 2 号 p. 239-244

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抄録
東京, 名古屋, 福岡, 宮崎, 那覇及び西表島で栽培した植付け当年のネピアグラス (Pennisetum purpurum Schumach), 品種メルケロンの葉身, 稈 (葉鞘を含む) 及び枯死部のメタン発酵性を調査した。収穫部各部の発酵ガス発生率 (材料の単位乾物重当りのガス発生量) は地域によりかなり異なったが, 葉身及び稈における地域差は気象要因の地域差などに関連した特定の傾向を示さなかった。しかし, 枯死部では平均降水量が多いほど, また, 稈では生育日数が長いこと及び乾物収量が大きいことに伴って, それぞれ, ガス発生率は低い傾向があった。収穫部全体のガス発生率も全乾物収量が大きいほど低かった。全材料の平均ガス発生率 (L kg-1) は, 葉身:542, 稈:352, 枯死部:342であり, 葉身の値は他に比べて有意に高く, 他の作物, 野草及び農産廃物などにおける値の中の高位値に匹敵した。発酵ガスのメタン含有率は各材料とも約60%とみなされた。これらの調査結果と各地域の乾物収量の値とを用いて年間メタン収量を推定したところ, 各地域とも年間1回刈りの方が2回刈りに比べて大きかった。全材料の平均メタン収量は約7, 000 m3 ha-1であり, この値は他のC4-及びC3-型飼料作物・牧草の値に比べて大きく, ネピアグラスはメタン主産原料として有望な作物と推察された。
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