抄録
ハクランの葉肉プロトプラストを用いて, その培養過程における葉緑体の脱分化を研究した。カイネチン0.5 mg/l及び2, 4-D 3mg/lを含むMS培地では細胞分裂が高頻度で見られ, 細胞活性もよく保たれたので, これを本実験の脱分化系培地とした。また, 前記の培地でカイネチンを含まない培地では細胞分裂がほとんど起こらず細胞が老化したので, これを老化系培地とし, 培養過程における両系の生理的な経時変化を追った。クロロフィル含量は両系共に減少し, 可溶性タンパク質については, 老化系では細胞全体と葉緑体とで共に減少し, 脱分化系では細胞全体では分裂にともなって増加するが, 葉緑体では減少する傾向がみられた。RNase活性は, 脱分化系では培養日数と共に増加し, 老化系では一度増加した後減少した。細胞全体と葉緑体とのRNaseの活性の増減は, 互いに平行関係にあったが, 全体に占める葉緑体のRNase 活性の割合は, 培養日数と共に減少した。SDS-PAGEにより葉緑体タンパク質の各成分の変化を分析すると, 両系共どのタンパク質成分も減少した。しかし, 老化系の培養7日後では, ほとんどのタンパク質が分解したのに対し, 脱分化系ではRuBPCaseやCF1のタンパク質が明らかに同定できた。プロテアーゼ活性は, 両系共に増加する傾向にあったが, 葉緑体を含まない分画での割合が高かった。