日本作物学会紀事
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水稲の青刈り利用と再生稲の子実生産に関する研究 : 第1報 作期および青刈りの時期と高さが青刈り稲並びに再生稲の収量, 飼料価値に及ぼす影響
大西 政夫堀江 武
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1990 年 59 巻 3 号 p. 419-425

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抄録

稲作と畜産の有機的結合を図る一手段として, 水稲を生育途中で一度青刈し, 飼料として利用するとともに再生稲から高い子実生産を得るための栽培・管理法を明らかにする目的で, 日本晴を供試し, 作期および青刈りの時期と高さが青刈り稲並びに再生稲の玄米, ワラの収量とそれらの飼料成分に及ぼす影響を調べた。青刈り時期が遅くなるほど青刈り稲の収量は直線的に増加したが, 玄米およびワラ収量は逆に直線的に減少した。さらに青刈り時期の遅延とともに, 青刈り稲の粗たん白質含有率は顕著に低下し, 粗脂肪含有率も低下する傾向にあった。このように青刈り時期は青刈り稲と再生稲の収量に拮抗的に影響するが, 両者をこみにした総合粗たん白質と総合粗脂肪収量は出穂前40~30日頃の青刈りで最大となり, さらにこの時期に刈取った青刈り稲の粗たん白質, 粗脂肪含有率はイネ科牧草のそれらの平均含有率よりも高かった。5cm刈りは10 cm刈りよりも青刈り稲収量は高いが, その飼料価値は低く, また再生稲の収量を低める傾向にあった。さらに, 早植えによって低刈りによる再生稲の減収割合が小さくなり, 青刈り稲の飼料価値も高まった。以上より, 日本晴を標準的な施肥条件下で, 青刈り実取り栽培を行う場合, 早植えし, 出穂前40~30日の地上10 cmでの青刈りが総合養分生産性並びに飼料価値の面で最適と考えられる。この場合, 飼料成分的にみて, 一般の牧草より優れた青刈り稲を約1.5 t/ha収穫できるとともに, 再生稲から無刈取りの70~90%の子実生産が期待できることがわかった。

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