日本作物学会紀事
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イネの対肥料反応性に関する研究 : 第1報 幼苗期における生長速度の品種間差
江原 宏土屋 幹夫小合 龍夫
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1990 年 59 巻 3 号 p. 426-434

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抄録

イネ幼苗期における生長速度の品種間差異と, それに関わる要因を明確にするため, インド型, 日本型の, 耐肥性, 草型および生育日数の異なるイネ35品種を, 7段階の培養液濃度下で第2葉抽出時から8.5葉期まで (30日間) 水耕栽培し, 生長解析を行うとともに, 実験終了時に, 葉身の全窒素, 全炭素含有率およびクロロフィル含量を測定した。その結果, 幼苗期における生長速度には培養液濃度が異なっても大小関係が変わらない品種間差異があり, その差異は, 乾物増加量 (ΔW) で9倍, RGR, NAR, LAR, SLAおよび葉面積当り窒素含有量で2~3倍と大きく, 比較的低濃度域で大きいことが明確になった。また, 乾物当り炭素含有量は, 品種および培養液濃度に拘らず一定であり, したがって, 葉面積当り炭素含有量はSLAによって一義的に規定されていることが明らかになった。他方, 生長速度の品種間差異に係わる主要な要因としては, 乾物重当りではなく葉面積当りの窒素含有量 (NCLA) が指摘でき, 低培養液濃度条件においても, また, 高培養液濃度条件によってSLAが増大する状況においても, NCLAを高く維持できる性質がNARを高く維持することにつながり, このことが生長速度が大きい品種群のもつ重要な特性となっていることを明確にした。また, この特性とインド型, 日本型の別, および耐肥性程度, 草型等との間には一定の対応関係が無いことを明らかにした。本論文では, これらの結果に基づいて, 生長パラメーターとしてのNCLAの重要性について論及した。

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