日本作物学会紀事
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イネの対肥料反応性に関する研究 : 第2報 幼苗の対肥料反応型について
土屋 幹夫江原 宏小合 龍夫
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1990 年 59 巻 3 号 p. 435-442

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抄録

イネ幼苗の対肥料反応の品種間差異と, それに係わる主要な形質および少肥向き, 多肥向き品種の具備すべき形質を明確にするため, インド型, 日本型のイネ35品種を用い, 培養液濃度に対する各生長パラメーターの変化および葉身の乾物重当り窒素含有量 (NCLW), 葉面積当り窒素含有量 (NCLA) の変化を検討した。その結果, 相対生長率 (RGR) の変化からみたイネ幼苗の対肥料反応は, 少なくとも6.5葉期以降の生育段階に達しないと明確に現れないこと, 培養液濃度に対するRGRの変化には4つの型が認められること, そして, 各RGRの対肥料反応型は, 培養液濃度に対する比葉面積 (SLA) とNCLAの変化を基礎として成立していることが明らかになった。また, SLAとNCLAの変化は極めて密接に関連しており, SLAの培養液濃度に対する変化がNCLA の変化を規制し, 両者の変化において表される品種の反応にし, 4つの典型的な型が認められることが明確になった。一方, NCLWの培養液濃度に対する変化にも品種間差が認められ, 3つの型に分けられた。RGR, SLA, NCLAおよびNCLWの変化型に基づいた供試品種の分類から, 栄養生長期の生育における少肥向き品種の有すべき形質としては, インド型品種の中に一部認められたような低濃度におけるNCLW, NCLAがともに高い性質が, また, 多肥向き品種の形質としては, 多くの日本型品種に認められたような, 高濃度域においてもSLAが著しく増大せず, RGRが高くて比較的安定している性質が, それぞれ重要と考えられた。

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