日本作物学会紀事
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イネ幼植物の短時間レベルにおける硝酸イオン吸収
長谷川 博
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1990 年 59 巻 3 号 p. 498-502

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抄録

効率的な作物栄養管理を行うにあたっては根におけるイオン吸収のメカニズムおよびその能力を把握する必要がある。この観点よりイネ幼植物における短時間レベルでの低濃度 (250μM) の硝酸イオン吸収を調べた。まず, 日本型水稲品種日本晴とインド型水稲品種Surjamukhiについて蒸留水で育てた幼植物の生育と硝酸吸収能の関係を調べた。播種後10~20日間では両品種間で硝酸吸収に関する差異はなく, 20日目の幼植物では10, 14日目の幼植物に比べて吸収能が低下していることが認められた。つぎに, 日本型, インド型の計10品種を供試し, 播種後l4日目の幼植物における硝酸吸収に及ぼす温度の影響を調べた。その結果, 28℃においては硝酸吸収に関する品種間差異はほとんど認められないこと, 温度の低下に伴い硝酸吸収能が低下するとともに吸収能の低下程度に品種間差異が認められることが明らかになった。低温における硝酸吸収能の低下程度はインド型水稲と日本型陸稲では日本型水稲よりも大きかった。北海道品種赤毛が最も低温下での吸収が大きかった。このように硝酸吸収能とイネ品種の生態型分化との関連が示唆された。カリウム吸収についても調査を行い, その吸収能は硝酸吸収能よりも大きく, 低温の影響も小さいことが明らかになった。

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