日本作物学会紀事
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^1H-NMRイメージングによるオオムギおよびダイズにおける登熟に伴う子実内自由水分布の変化の解析
狩野 広美石田 信昭小林 登史夫小泉 美香
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1990 年 59 巻 3 号 p. 503-509

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抄録

オオムギ子実における自由水 (NMRで観測し得る水) 含量と呼吸活性の間には強い相関が認められるので水の存在量と運動性を生物活性の指標として用いることができると考えられる。そこで, 1H-NMRイメージング (MRI) により登熟中のオオムギとダイズの子実における自由水の分布地図の変化を追跡した。オオムギにおいては, 自由水の消失は胚乳で不均一に起こり, これは生物活性の低下とデンプンやタンパク質などの貯蔵物質の蓄積を示すと考えられる。オオムギでは出穂後14日目には維管束は大く見えるが登熟が進むとともに細くなり, 39日目には維管束の水が認められなくなった。一方, ダイズでは, 肥大中の子実には自由水が均一に認められるが, 最大肥大期以降の子実および乾燥子実では水のシグナルが認められず, 子実の水は大部分貯蔵物質に結合して束縛された状態であると考えられた。子実に自由水が認められなくなった登熟後期のオオムギの穂においても穂軸と芒には自由水が認められた。また, 子実中には自由水が認められなくなった完熟期のダイズでも莢には自由水が認められた。乾燥ダイズでは弱い1H-NMRのシグナルが観測されたが, これは貯蔵脂肪に由来するものであると考えられる。

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