運動型の異なるインゲンマメの2品種について, 光強度と気温の変化に対する小葉の運動を検討した。ポット植えの姫手亡 (上下傾斜型) と大正金時 (横向き傾斜型) を用いて, 側小葉の上下傾斜角と横向き傾斜角の変化を, 各々4段階の光強度と気温のもとで測定した。小葉の2つの傾斜角により算出された葉面法線と光線との角度 (ここでは"葉光角"と呼ぶ) は, どのような光強度でも姫手亡が大正金時より小さかった (第1図) 。これは, 大正金時の横向き傾斜が大きく反応したのに対して, 姫手亡では, 上下傾斜が大きく反応したことによるものであった (弟2図) 。このことは, 光に対する追跡反応と忌避反応を側小葉の上下傾斜と横向き傾斜が各々行う, 調位運動の機能的分化を示しているように思われた。このような現象は, 気温の変化に対する反応からも認められ (第3・4図), 横向き傾斜の増大は小葉が強い光や高温に曝される場合の葉温上昇によってもたらされものと推定された。さらに, 姫手亡の小葉は弱光下でも上下傾斜が大きく反応し, ある強度以下では光強度と共に気温の影響もほとんど受けなかった。しかし, 大正金時の, 特に横向き傾斜の反応は, 光強度の増加や気温の上昇に伴って大きくなることが認められた。従って, インゲンマメの品種における調位運動の差異は, 光に対する感受性と葉温による反応性によってもたらされるものと考えられた。