日本作物学会紀事
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水稲品種の窒素に対する反応とくに生育初期の窒素吸収との関係
和田 源七Sta.CRUZ P.
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1990 年 59 巻 3 号 p. 540-547

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抄録

IRRI育成の62品種/系統を用い, 1986年雨期および1987年乾期に生育初期 (移植後30日間) の窒素吸収量 (NAE) と収量構成要素および吸収窒素の利用効率との関係を調査した。分化Sink量は生育期間の長短および作期に関係なくNAEと相関を示した。退化Sink量は生育期間が比較的長い場合にのみNAEの影響をうけた。Sink量は乾期で生育期間が127日以下, 雨期で122日以下の場合にNAEと相関を示し, 収量は乾期と雨期で生育期間が116日あるいは122 日以下の場合にNAEと相関を示した。中・長期品種ではSinkの退化と不登熟籾の多発がNAEとSinkおよび収量との関係を乱した。NAEは吸収窒素のSink量および分化Sink量への貢献度と生育期間が長くない場合にのみ相関を示した。NAEは早生品種にとって, 窒素吸収量の増大のみならず吸収窒素のSinkに対する貢献度の面を通して重要な形質とみられた。多基肥および高栽植密度もまた初期の窒素吸収量を増大させ, 早生品種の場合には吸収窒素のSink量への貢献度を増大させる。早生品種の窒素吸収能力の不足は密植および多基肥によりかなりの程度補償されると考えられる。

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