抄録
イネの花粉細胞の発達とタペート細胞の推移をグリコールメタクリル樹脂準超薄切片法により観察した. 調整により変形を生じた花粉像を含む切片を除き, このアーティファクト像が生成する背景を考察した. 発達しつつある花粉細胞とタペート細胞の間に密接な位置的関係があり, この関係が成熟花粉に至るまで維持されることを認めた. 発芽孔はタぺート組織に常に押し付けられているのではなく, その多くが, この組織の方向を向いているように観察された. タペート組織の退化には小胞子の発達が関係していると考えた. 成熟花粉内への物質の蓄積ならびに花粉が最終的にタペート組織の内壁から離れやすくなることは, 葯内の水分の減少に伴って生ずるものと推察した.