日本作物学会紀事
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形質転換植物におけるGUSレポーター遣伝子産物の最終局在は液胞であろう
村上 高細川 大ニ郎大橋 祐子
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1992 年 61 巻 3 号 p. 503-510

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抄録
形質転換植物中に導入された外来遺伝子の組織・細胞特異的発現の様相を明らかにするためのレポーター遺伝子として, β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子が近年最もよく用いられている. しかし細菌由来のタンバク質であるGUSの植物細胞内における局在性に関しては明らかな知見がない. そこでGUSリポーター遣伝子を導入した形質転換タバコを材料として光学顕微鏡的および免疫電子顕微鏡的組織化学によりGUSの局在性を調べた. 葉身や茎の緑色組織では, GUSの反応生成物である青色色素が, 葉緑体を始めとする細胞内小器官上およびそれらの周囲付近に例外なく見出されたが, GUS活性の高い細胞では, これに加えて細胞内に青色の液状染色が観察された. このような細胞を原形質分離(PL)させることにより, 細胞外や細胞壁には全く活性がないことを確認した. そこで, これらの細胞におけるGUS染色像を, 液胞特異的染色色素である中性赤(NR)の赤色染色像とPLさせながら比較すると, 両者とも全く同様の挙動をした. また, 若い木部柔組織や毛茸では, 液胞が小さくまだ細胞内に充満していないが, NRによる染色が, GUSによる青色染色と全く類似の像として観察された. さらにGUS特異的抗体を用いたプロテインA-金コロイド法による電顕的観察では, 多くの金粒子が液胞内の電子密度の高い小胞中に局在するが, 他の部位にはごく稀か殆ど見出されないことが示された. これらの結果は, GUSは細胞質で作られた後, 最終的には液胞内に排出されることを示唆するものと考えられる.
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