日本作物学会紀事
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発芽中のイネ種子の周りで起こる局所的土壌還元の品種および温度間差異
萩原 素之井村 光夫
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1993 年 62 巻 1 号 p. 105-110

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抄録
湛水土壌中にイネ種子を播種すると種子の周りで局所的土壌還元が起こるが, この還元は出芽の阻害要因である. 1つの品種についてみた場合, この還元域が早期に, 大きくなるほど出芽が阻害される. 出芽の品種間差と局所的土壌還元との関係を検討するため, イネ種子の周りで起こる土壌還元の品種および温度による違いを調査した. 17℃では20℃よりも発芽前に種子が種子の周りで起こる土壌還元にさらされる期間が長かった. 還元の進行は17℃では20℃の場合の約1/2の緩やかさであったが, 発芽の頃の還元域は17℃でも20℃の場合より著しく小さくはなかった. したがって, 局所的土壌還元の出芽に対する影響は温度が低い場合に大きくなると推察した. このことは, 一般に低温下で出芽不良となることと関連が深いと思われた. 一方, 各品種の発芽率は17℃と20℃でほぼ等しく, 発芽率は出芽率よりも局所的土壌還元の影響を受けにくかった. 種子の周りの土壌還元の進行には品種間差がみられたが, 還元域の大きさと発芽率との間の正相関および, 還元域の大きさと出芽率との間の負相関はいずれも有意ではなかった. したがって, 出芽率の品種間差の発現には還元域の大きさだけでなく, Ehや還元土壌条件に対する耐性も関与していると考えられた.
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