日本作物学会紀事
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水稲圃場試験調査法の改善のための基礎研究 : 第4報 乾物重の効率的調査法
楠田 宰
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1993 年 62 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

水稲の乾物重は, 生育診断や生育予測のために重要な形質である. しかし, 乾物重の調査には多くの時間を要するためにその実施が困難となってきている. そこで, 簡便でかつ一定水準以上の信頼性を確保した乾物重の効率的な調査法を新たに確立する必要がある. 各農業試験研究機関においても乾物重調査の省力化が図られているが, 精度については経験的に問題がないと判断されている場合が多く, 統計的検証を行った例はほとんど見られない. 本報では, まず, 乾物重調査に重複抽出による比推定法を適用した場合の標本数, 精度, 所要時間を調査・解析して, その有効性を精度の確保と省力性の両面から検討した. その結果, 乾物重調査に, 生体重を補助量とする重複抽出による比推定法を適用すると, 標本調査の原則である単純推定法と同等の精度の推定値を得るための所要時間が短縮され, 調査の効率化に有効と判断された. 茎数・穂数を立毛調査して補助量とする場合は, 省力化の程度は小さかったが, 圃場から抜取る株数が単純推定法に比べて少ないという利点があった. 次に, 試験研究機関の生育調査は20株程度について行われる場合が多いので, 20株について調査した生体重や茎数・穂数のデータを活用した各種の乾物重調査法の精度と所要時間を調査・解析した. 精度と所要時間の両面から判断した効率的な調査法は, 20株を「対角」抽出して補助量を調査し, その中から2次標本としてランダム抽出した所定の株数について乾物重を調査して, 比推定する方法であった.

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