日本作物学会紀事
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播種期の違いが春播コムギの乾物分配率に及ぼす影響
高橋 肇中世古 公男
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1993 年 62 巻 1 号 p. 88-94

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抄録
春播コムギ3品種を2週間間隔で3回播種し, 主要生育ステージを転換点とする4つの生育相について, 播種期の違いによる葉身, 穂および子実への乾物分配率の動向の変化を出芽後日数および発育指数に対する回帰式によって評価した. 生育相I (出芽期~幼穂分化期) では, 葉身への分配率 (Yl) を出芽後日数 (X) に対する回帰式Yl1=b1X+c1と発育指数 (X) に対する回帰式Yl1=B1X+C1で示した. 播種期の遅れにともない, 係数b1は増加し, 係数B1も同様に増加することから係数b1の増加が生育相の期間の短縮に原因しないことが明らかとなった. 生育相II (幼穂分化期~止葉出葉期) では, 葉身への分配率を出芽後日数に対する回帰式Yl2=-b2X+c2と発育指数に対する回帰式Yl2=-B2X+C2で示した. 係数b2は3品種とも早播区で最も低い値を示したが, 係数B2は播種期による変動の傾向が係数b2と異なり, 早播区で生育相の期間が長かったことに起因するものと考えられた. 一方, 生育相III (止葉出葉期~開花期) では, 穂への分配率 (Ye) を出芽後日数に対する回帰式Ye=-a3 (X-b3)2+c3と発育指数に対する回帰式Ye=-A3 (X-B3)2+C3で示した. 播種期の遅れにともない係数a3と定数項c3が増加し, 回帰曲線が細く尖った形を示した. 係数A3と定数項C3は晩播区で最も高く, 形の変化が生育相の期間の差に起因しないことが明かとなった. 生育相IV (開花期~乳熟期) では, 子実への分配率 (Yg) を出芽後日数に対する回帰式Yg=b4X-c4で示したが, 相関関係が低く, 回帰式が適合しないことが明かとなった. この原因として, 子実が常時一定の生長を示すのに対し, 稈の貯蔵養分は日射量の変化にともない増減することが明かとなった.
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