日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
塩分と温度が六倍体ライコムギの収量, 無機イオン濃度および生理に及ぼす影響
KARIM M.A.縄田 栄治重永 昌二
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 62 巻 3 号 p. 419-428

詳細
抄録
六倍体ライコムギの栽培における塩分と温度の複合的な影響を検討する目的で, 50mMの塩化ナトリウム水溶液をかんがい水として用い, 昼/夜温を20/15℃の低温または30/25℃の高温条件で試験栽培した場合の収量, 体内の無機イオン濃度, および光合成速度等の生理学的諸形質を解析した. 試験は遺伝的背景の異なる2品種, WelshおおびCurrencyを用いたガラス室内でのポット栽培試験によった. その結果, 塩分の生育および収量に対する抑制的な影響は, 低温区よりも高温区において顕著であった. 種子収量を指標として比較した場合, 高温区ではCurrencyの方がWelshよりも耐塩性が大であったが, 低温区ではこの関係が逆転した. 塩分と高温の複合的な影響により可稔穂数や個体当たりの種子数が著しく低下した. また, 塩分は浸透ポテンシャル, 蒸散速度および光合成速度を低下させるが, その低下はとくに高温区において著しくなること, さらに塩分は葉のClおよびNaイオン濃度を上昇させるが, それはとくに高温区において著しいこと, またKイオン濃度をWelshにおいては低下させるが, Currencyにおいては上昇させること, そしてCaおよびMgイオン濃度を低下させることなどが明らかになった.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top