抄録
耐肥性程度の異なる水稲4品種を用い, 異なる窒素施用量が根系発達に及ぼす影響を, 根系構成要素別に比較検討した. 窒素施用量の違いにより3処理区をもうけ, 各品種3反復で実験を行った. 処理区は5N区 (5kg-N/1000m2), 10N区 (10kg-N/1000m2), 30N区 (30kg-N/1000m2) とし, 施肥量を2分して基肥と追肥 (播種後35日) で与えた. サンプリングは播種後33日と出穂期に行なった. 播種後33日目の個体では, 全品種で窒素増肥に伴い節根数は10N区と30N区で増加したが, 総節根長, 総根長の窒素増肥に対する反応は, 5N区に対し, 30N区で減少する品種と, 全処理区で同等の値を示す品種に別れた. 出穂期の個体では, 全ての品種において33日目の個体と比較して, 窒素施用量の増加に伴う節根軸長の抑制程度が小さく, 節根数の増加とあいまって総節根長は増加した. 一方, 側根の発達程度には品種間差異が認められ, 品種の耐肥性程度の大小によって明確に異なる反応を示した. 耐肥性程度の小さな品種は, 窒素増肥に伴って側根を発達させ, 30N区においても側根長を増加させたが, 耐肥性の大きな品種は, 30N区において側根長を増加させず10N区と同様の値を示した.