日本作物学会紀事
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葉身および枝梗の部分切除によるソース/シンク比の変化が, 登熟期の水稲止葉の物質生産, 老化に及ぼす影響
和田 義春三浦 邦夫渡辺 和之
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1993 年 62 巻 4 号 p. 547-553

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抄録
水稲コシヒカリを供試し, 開花期に葉身および枝梗の部分切除を行って実験的にソース/シンク比を変化させ, 登熟期の止葉の物質生産能力および老化に及ぼす影響を調査した. 1籾当りの開花期葉面積で評価したソース/シンク比は, 無処理区で0.75であり, 処理により0.24から1.53まで変化した. 開花後12日目の止葉の光合成速度には処理間で有意な差はみられなかった. 止葉のクロロフィル含量とリブロース1, 5-2リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ (ルビスコ) 含量は, シンクを小とした区で高く保たれた. 開花後3週目の各処理区の止葉のクロロフィル含量およびルビスコ含量とソース/シンク比との間には正の相関関係 (P<0.01) がみられた. したがって, ソース/シンク比が小, すなわち相対的にシンクが大きいほど止葉の老化が促進されるものと判断された. 一方, 止葉中のショ糖合成に関与する酵素活性は, ソース/シンク比の違いにより有意な差を生じなかった. 登熟期のショ糖およびデンプン含量の消長は, 葉鞘+稈では処理の影響が大であったが, 止葉への影響は比較的小さかった. 一方, 止葉の窒素含量は, シンクが小の区ほど高く保たれた. 以上のことから, ソース/シンク比の違いによる止葉の老化の相違は, 炭水化物含量の変化に基づくものではなく, 窒素の動態の変化によるものと判断された. すなわち, 相対的にシンクを大とすると, ソースである葉身からシンクである穂への窒素の再移動が大となりクロロフィル含量, ルビスコ含量の低下が促進されると考えられた.
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