抄録
大気湿度の低下による水分ストレスと根からの吸水阻害による水分ストレスとが, 水稲の生育に及ぼす影響の差異を調べた. 実験は気温28/24℃(昼/夜)のもとで, 乾燥区(大気の相対湿度60%区)と湿潤区(90%区)を設け, その各々の区にポリエチレングリコールを用いて, 水耕液に低い浸透ポテンシャルを与え, 吸水阻害処理を行った. その結果, 地上部の生長においては大気湿度の低下あるいは吸水阻害による水分ストレスによってともに, 葉身長, 葉面積, 乾物重増加量が減少し, 比葉重が高まった. 根部の生長では, 大気湿度の低下によって, 根数, 総根長および根部乾物重増加量が減少し, 平均根長は増大した. 一方, 吸水阻害では根数は減少したが, 平均根長, 総根長, 根径, 根部乾物重増加量は湿潤区で増加した. また, 個体当たり地上部および根部乾物重増加量は大気湿度の低下により減少し, その減少率は根部の方が地上部より大きかった. その結果, T-R率は乾燥区の方が湿潤区より高くなった. 一方, 吸水阻害では地上部の乾物重増加量は両湿度区とも減少し, 根部乾物重増加量も乾燥区では減少したが, 湿潤区では逆に増加した. その結果, 湿潤区では吸水阻害によってT-R率は, 大きく低下した. このように, 水稲体内に同程度の水分ストレスを生じさせた場合にも, 大気の乾燥による場合と吸水阻害による場合とでは影響の異なることが明らかになった.