アブシジン酸(ABA)および高浸透圧物質は, ともに植物の体細胞胚発生に影響を与える. しかし胚発生, 特に胚発生時の貯蔵物質蓄積に対するこれらの物質の作用の相違については明らかでない. そこでサトウキビ(Saccharum officinarum L.)の培養カルスからの胚発生に対するABAとソルビトールの作用を比較した. 胚発生促進において, ABAもソルビトールも最適濃度範囲があった. 処理開始14日目の体細胞胚の胚盤を電子顕微鏡で観察したところ, 10-5 M ABA処理では細胞のかなりの体積がプロティンボディで占められ, アミロプラストは観察されなかったのに対し, 9%ソルビトール処理では多数のデンプン粒と脂質粒が観察され, プロティンボディは認められなかった. 従って胚発生促進におけるABAとソルビトールの作用機構は異なっていると結論された.