日本作物学会紀事
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塩分濃度に対するイネの生理反応に関する研究 : 第5報 イネの根にNaCl溶液を加圧した場合のNa+排除率の品種間差異
土屋 幹夫ボニラ ピルバート熊野 誠一
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1995 年 64 巻 1 号 p. 102-108

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抄録
本研究では, イネの根にNaCl溶液を加圧した場合のNa+排除率の品種間差異を調査した. 実験にはインド型品種, Hsieh-Tso 12, IR4595-4-1-13, Jyothi, Kala-Rata 1-24, Mangasa, Milyang 23, Pokkali および SEW 273-5-13と日本型品種, アケボノおよび朝日の計10品種を供試した. 8葉期の6~8cmの節根を試料とし, 20 mmol l-1 NaCl溶液を窒素ガスを用いて294あるいは686 kPaで加圧し, 出液のNa+濃度を測定した. その外液に対する相対値を用いてNa+排除率の指標とした. その結果, 低圧, 高圧いずれの条件下, いずれの品種の根でも Na+ および Cl- の排除が認められた. そして, 耐塩性品種Milyang 23, SEW 273-5-13および感受性品種Mangasaのように加圧によって排除率が高まる品種, Hsieh・Tso 12のように両圧力下で同様に高い排除率を示す品種, そして, Pokkaliおよび朝日のように両加圧下での排除率が同程度に低い品種が認められた. また, Na+, Cl- および K+の流出量は出液速度とともに増加したが, 同じ出液速度では高圧の場合に, 各イオンの流出量が小さいことが明確になった. また, 加圧下の排除率には, 根のリグニン含有率が高いほど高い傾向が認められた. これらの結果から, 蒸散あるいは浸透調節を駆動力とすると推察される高い引圧が根にかかる場合にはイオン排除率は高まることが推察された.
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