抄録
長期間継代培養したイネカルスの再分化と蛋白質新生に及ぼすアブシジン酸の影響について検討した. その結果は下記に要約される. 1) ABAの添加によってカルスの見かけの生長量は低下したが, 乾物重の増加は著しい. 2) 乾物重当たりの可溶性蛋白質の量的増加が認められた. 3) ABAは 14, 18.5, 25, 45kDaの蛋白質を誘導するが, いずれの蛋白質分子も完熟種子胚に存在し, 発芽にともなって消失する. 4) ABA添加培地に生育するイネカルスの可溶性蛋白質の電気泳動像 (SDS・PAGE) は再分化カルスや, 発芽種子胚の可溶性蛋白質の電気泳動と極めて類似している. 5) 培地に10mgL-1ABAを添加して培養すると15日後には再分化細胞集塊が形成され極めて高い頻度で不定芽形成を観察した.