日本作物学会紀事
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塩分濃度に対するイネの生理反応に関する研究 : 第4報 NaCl溶液を加圧した場合の切断根におけるイオン排除
土屋 幹夫三宅 幸ボニラ ピルバート熊野 誠一
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1995 年 64 巻 1 号 p. 93-101

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抄録
イネの節根 (切断根) に20 mmol-1 NaCl溶液を490 kPaで加圧した場合のイオン排除について, 切断面全体あるいは中心柱部分から出液を採取した場合, 表皮から厚壁細胞層までを貫く穴を開けた場合, 根の表面を部分的にエポキシ樹脂で被服した場合に得られる出液イオン濃度を測定するとともに, ソルガムおよびトウモロコシの根とのイオン排除率の比較を行った. また, 加圧する圧力, 根を取り巻く外液の温度, pH, 溶存気体量, イオン組成および代謝阻害剤の排除率に及ぼす影響を調べた. Na+とCl-の排除率は, イネ<ソルガム<トウモロコシの順に高く, どの植物でも中心柱部分からの出液で高かった. また, 排除率は根の基部でより高く, 表皮から厚壁細胞層を貫く穴を開けると低下した. 一方, 排除率は高圧下で高い値を示したが, 高温, 高pHでは根に外観的変性が認められて低下し, また脱気した場合にも徐々に低下した. イオン別に調べた排除率は, K+ < Cl- < Na+ < Ca2+ < Mg2+の順に高く, 水和半径に関係していることが窺われた. また, 0.5mmol l-1の2, 4-dinitrophenolあるいはNaN3で前処理した根では, Na+排除率の低下とともに出液速度の増大が認められ, 溶液流入の障壁部位が壊れた結果として, イオンの選択性が低下している可能性が推察された.
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