日本作物学会紀事
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葉鞘から切り離した水稲個葉の純光合成速度の一時的上昇と葉内水分との関係
津野 幸人面地 理山口 武視中野 淳一赤井田 里美
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1995 年 64 巻 3 号 p. 492-499

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抄録
鉢栽培した水稲(品種:ヤマビコ, オオチカラ, 荒木)の個葉を温度25℃, 照度45~50Klxの条件で, 同化箱により純光合成速度(Pn)を測りながら葉身基部を葉鞘から切離した. 同時に, 葉内水分の変化を非破壊的にβ線透過率(I/I0)で測定した. 処理前の純光合成速度(Pn*)の高い葉, および著しく老化が進んだ葉を除いて, 切離処理後1分間以内にPnは急激な一時的上昇を示し, 以後急速に低下した. そのPnの最大増加率は, 処理前のPnが低いほど大であった. また, 切離処理によるPnの増加量(ΔPn)は, I/I0で示される葉内水分の減量(ΔI/I0)の多いものほど大であった. これらの関係は次式で表現でき, 計算値は実測値とよく適合した. ΔPn=4.95exp(-0.06Pn*)・Δ(I/I0)(r=-0.965**) 葉内水分量と葉内空気量とは負の相関があることより, 水分過剰のときは葉肉拡散伝導度が抑制されると推論した. これは, 切離処理によるPnの増加は, 気孔開度には変化がなくて, 葉内CO2濃度が低下するという実験結果を根拠とした. 処理前の葉身に水分が多くてPn*が抑制されている葉ほど, 葉内水分の減少過程において一時的に大きなΔPnが得られることとなる. 葉内水分の過多によるPnの抑制は, 早朝および曇天時日中でも生じていることを野外実験で確かめた.
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