抄録
定植後4年生の茶園を供試し, その後3年間施肥窒素量を変え, 窒素の吸収利用を堀取り法により追跡するとともに, 多肥栽培茶園(年間窒素施肥量293kg/10 a)における秋肥, 春肥, 夏肥の施肥窒素(15N)吸収量を測定した. 実験開始初年度である定植5年生樹の年間乾物生産量は, 施肥量の増大にともない多くなったが, 成園化のための仕立てにより翌年には急減し, 7年生樹の乾物生産量は5年生樹の約半分となった. 180 kgN/10 aの多肥区での年間乾物増加量は年とともに低下し, 7年生樹では施肥区間で差は認められなかった. 5年生樹の10a当たり窒素吸収量は30~43kgと多かったが, 7年生樹では成園化にともなう成長速度の低下とともに吸収量も減少し23~27kgであった. そして, これら窒素吸収量のうち10kg程度は有機物などの分解による土壌窒素に由来するものと推定した. 7年生樹の施肥窒素吸収利用率は10a当たり窒素施用量が60, 120, 180kgのとき, それぞれ21.5, 13.8, 9.6%と多施肥に伴い減少した. また深耕等の影響により, 特に秋肥窒素(15N)の吸収量は極めて少なく, 一番茶新芽への寄与率は5~10%であった. なお, 秋, 春肥窒素とも施肥量が多いほど15N吸収量は多く, 葉への蓄積が大となった. しかし秋堀取り調査時の主幹, 大根, 中細根の窒素濃度は施肥量が多いほど低い傾向が認められた. これは多肥により施肥部の畦間から株元まで広範囲にわたり根が濃度障害を起し, その後の施肥窒素の吸収が抑制された結果と考えられた.