抄録
前報で, 韓国産水稲品種にNaCl処理を施し, 処理による乾物生産速度の低下程度から品種の耐塩性を評価した. 本報では, 耐塩性の品種間差の機構を, 主に器官におけるNaイオン(Na+)とKイオン(K+)の関係という面から解析した. 耐塩性が高いと同定された3品種と, 低いとされた3品種を, 参考品種の日本晴, I 8とともに, 25, 50, 75mMのNaClを含む木村氏B液で栽培した. 養液中のNaCl濃度が高くなるにつれて, いずれの品種においても葉身, 葉鞘, 根のNa+濃度は増加した. さらに, NaCl処理は, 根と葉鞘のK+濃度を低下させたが, 葉身では, ほとんどの品種において, K+濃度を増加させていた. これらのことから, 根では, K+の吸収はNaCl処埋によって抑制されるが, 一方, 葉身へのK+の移動と葉身における蓄積は, NaCl処理によって抑制されないと考えられた. 以上のように, 葉身においてはNa+蓄積によるK+蓄積の抑制が行われておらず, したがって, このことが耐塩性に関係していないと考えられた. しかし根においては, Na+濃度の増大にともなうK+濃度の低下が起きており, この程度が, 品種の耐塩性と関係している可能性があると考えられた.