抄録
穂数, 子実粒数と粒重, 胚乳細胞数およびデンプン粒数を測定することで, 遮光処理による光合成産物の不足がコムギのシンク形成に及ぼす影響を調査した. 遮光処理は, 登熟期間中の3つの登熟相において春播コムギ品種ハルユタカの群落上面を95%遮光布で覆い, 群落での光合成生産をほぼ停止させた. 開花前2日目から開花後7日目までの登熟初期における処理を初期処理, 開花後7日目から14日目までの登熟前期における処理を前期処理, さらに開花後14日目から21日目までの登熟後期における処理を後期処理とした. 子実収量は, 初期処理によって11%減少した. これは, 粒数が17%減少したためであり, 特に, 第3小花位置での粒数が62%減少したためである. 前期処理および後期処理ではそれぞれ20%および16%減少し, すべての小花位置における粒重がそれぞれ減少したことがその原因となった. 粒重の減少は, 胚乳細胞数の減少によるものではなく, 胚乳内の大型デンプン粒が小さくなったことに起因していた. 各登熟相における遮光の影響は, それぞれの子実形成の生理的事象によって説明することができた.