抄録
湛水土壌条件下で成育させた水稲種子根系のエイジングのパターンを明らかにするために, 基部から11cm部分の主根軸とそれから発根した側根を対象に, 両者のコハク酸脱水素酵素(SDH)およびパーオキシダーゼ(POD)活性の変化を経時的に調べた. 主根軸と側根におけるSDH活性は, 発根直後は高い活性を示したが, その後はエイジが進むにつれて急速に活性が低下した. また, 側根の方が常に主根軸より高い活性を維持した. Triphenyltetrazolium chloride還元反応に対して陽性反応を示した側根の割合は, 発根後4日までは100%であった. その後は14から24%に低下したが, 出穂期においても依然として約8%の側根が陽性反応を示した. 一方, 主根軸と側根におけるPOD活性は, エイジの進行とともに増加した. SDH活性と同様に側根が常に主根軸の活性を上回り, 出穂期においては最高値に達し, 約3.6倍の活性を示した. このようなエイジングに伴うPOD活性の上昇について, とくに老化遅延との関連で考察した. これらの結果は, 側根より主根軸の老化が先行することと, 側根が種子根系の生理的活性において重要な役割を果していることを示唆した. さらに, 水稲の種子根系は少なくとも出穂期まで生存していることが明らかとなった.