日本作物学会紀事
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チャの根系を構成する様々な直径の根の生理機能の定量的評価
岡野 邦夫大前 英
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1996 年 65 巻 4 号 p. 605-611

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抄録

茶栽培における深耕や断根等の根系制御枝術を確立する目的で, 根系を構成する各種の根が生理機能をどのように分担しているかを定量的に評価し, それに基づいて根系の理想型を考察した. 一番茶萌芽期に掘り取った定植2年目の茶樹の地上部/地下部重比は1.5前後であった. 根系を構成する根を直径別に4段階に分級し, その重量比率を求めたところ, 白色細根(φ<1mm)が30%, 褐色細根(φ1-2mm)が10%, 中根I(φ2-5mm)が15%, 中根II(φ>5mm)が45%を占めた. 乾物重当たりの窒素吸収速度や呼吸速度はエージの若い根ほど高かったが, 全可利用炭水化物(TAC)含量はエージの進んだ木化根ほど高かった. 量的にみた場合, 根系全体の呼吸活性の75%, 窒素吸収活性の90%を直径が2mm以下の細根が担っており, 特にエージの若い白色細根の役割が大きかった. 一方, 根系中のTACの84%は木化の進んだ中根に存在した. 茶の主要な呈味成分であるテアニンは白色細根に多く存在し, 木化根で少なかったことから, 合成中心は白色細根と考えられた. 木化根では窒素の蓄積形態と考えられるアルギニンが多量に蓄積した. これらの結果から, 茶樹根系の理想型は栽培目的によって異なり, 収量・品質を重視する立場からは細根比率の高い根系が望ましいが, 環境ストレス耐性を重視する場合には発達した木化根の存在が不可欠と考えられた.

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