日本作物学会紀事
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イネの茎葉生育の規則性に関する発育形態学的研究 : 第6報 主稈と各1次分げつ芽の間における葉原基の分化・発育の規則的関係
松葉 捷也
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1996 年 65 巻 4 号 p. 618-625

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抄録

主稈と各1次分げつ芽での葉原基の分化・発育の経過を栄養生長の全期間にわたって解剖観察した. 材料は, 直播で個体間競合が生じないように育て, 主稈各葉の抽出開始期(n.1葉期)とそれぞれの中間期に採取した. 葉原基分化の指標は, 茎頂の側面にできる「膨らみ」とした. コシヒカリの6.1葉期以降の各n.1葉期には, 抽出開始葉の内側に, 幼葉と葉原基-合わせて「内包葉」と呼ぶ-が4枚形成されていた. 内包葉は, 5.1葉期以前の各n.1葉期には3枚であった. これに比べ,極早生品種で内包葉数が1枚増加する時期は, 1,2葉齢早かった. コシヒカリの主稈の1.1葉期から10.1葉期の間に, 2~9分げつ芽での葉原基の分化は, 基本的に以下のように規則的に推移した. (1)半球状の分げつ原基が, 主稈の抽出開始葉の葉腋にできている. (2)この抽出開始葉が展開し終わるまでの1出葉期間に, 分げつ原基の茎頂では前出葉と第1葉の各原基が分化する. (3)この後の3回の各出葉期間に, 葉原基は順次それぞれ2個, 1個, そして2個分化する. ちなみに, この後者の2のうちの最新の葉原基は, 主稈がn.1葉基に達した時点の(n-3)葉節の分げつの茎頂に認められ, 膨らみ状の第6葉原基であった. この時その第2葉は抽出を開始していた. ただし, 2, 9分げつ芽では, それぞれの第6葉原基の分化が上記より少し遅れていた. これらの2~9分げつ芽は, 分げつに生長するが, 上記の規則性からはずれた高位1次分げつ芽は途中で生長を停止した.

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