日本作物学会紀事
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幼茶樹における15N-窒素の吸収, 分配及び再分配パターンの季節変化
岡野 邦夫松尾 喜義
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1996 年 65 巻 4 号 p. 707-713

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抄録

チャの窒素要求性の季節変動を調べる目的で, ガラス室内で水耕栽培した幼茶樹に対して, 年間を通じて1カ月間ずつ15Nをパルスラベルした. そして月毎に吸収された窒素について, 個体当たりの吸収量, 樹体内での一次分配, 一番茶摘採期における再分配を調査した. 窒素吸収は4月, 5月には活発であったが, 夏期にはやや低下した. 吸収は秋期の10月, 11月に再び高まり, 以後冬期に向かって低下した. しかし, ガラス室内で生育したためか, 冬期にもかなりの窒素吸収が認められた. 4月から9月の生長期に吸収された窒素の多くは葉, 特に新芽へ分配された. 一方, 11月から2月の生長停止期に吸収された窒素の大部分はそのまま根中に滞留し, 一番茶萌芽後, 新芽へ再転流した. 同位体希釈法で求めた一番茶新芽窒素に対する月別吸収窒素の寄与率は, 前年春期から夏期の各月には低かったが, 秋期から冬期にかけて徐々に上昇した. 寄与率は早春の各月にさらに高まり, 2月から4月の3カ月間の寄与率の合計値は60%に達した. このように最も間近に投与した窒素ほど, 一番茶新芽窒素への寄与率が高かった. 従って, 一番茶新芽の品質向上には, 萌芽期前後に窒素肥料を施用するのが最も効果的と考えられた. 考察では, 前年までに吸収された窒素の重要性についても議論した.

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