日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
早期水稲の生育に及ぼす新聞古紙マルチの効果
梅崎 輝尚津野 和宣
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 67 巻 2 号 p. 143-148

詳細
抄録

近年, 環境保全や森林資源の保護を目的としたリサイクル活動が盛んである.回収された新聞古紙の利用方法の一つとして, 南九州地方の早期水稲栽培で新聞古紙によるマルチを試み, その効果について検討した.特に水田の地温の変化と雑草の防除に着目して, 1995年と1996年の2ヵ年にわたり宮崎大学農学部附属農場内の水田において, 品種コシヒカリを供試して栽培実験を行った.移植直後の水田では, 新聞古紙マルチ処理により昼間の地温上昇抑制効果と夜間の保温効果が認められた.また, 新聞古紙マルチ処理により雑草の発生は明らかに抑制され, 初期の除草剤との併用で全ての草種に対して充分な効果が見られた.新聞古紙マルチ処理により水稲の出穂期, 成熟期はやや遅れたが, 栄養生長量は増大して玄米収量は雑草の発生量が多かった対照区を約40%上回り, 慣行栽培と同程度かやや増収となった.これは, 分げつ数の確保ならびに個々の分げつの充実に伴う有効穂数の増加と一穂籾数の増加によるものと考えられた.なお, 水田表層の土壌窒素は新聞古紙マルチ処理により流失を押さえられることが推察され, 新聞古紙マルチ栽培体系の確立により効果的な水稲生産ができるものと考えられた.

著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top