日本作物学会紀事
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栽培法の違いが水田における雑草の発生と水稲の生育・収量におよぼす影響 : 特にアイガモ農法に着目して
磯部 勝孝浅野 紘臣坪木 良雄
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1998 年 67 巻 3 号 p. 297-301

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抄録

アイガモの放飼による除草効果や水稲の収量への影響を検討するとともに, 水稲の稈に対する影響を明らかにするため, 1994年と1996年に試験を行った.試験区は無処理区, アイガモ区, 慣行区の3区を設けた.アイガモ区は, 有機質肥料のみを施用し, アイガモを放飼した.無処理区は, アイガモ区の一部に金網を張ってアイガモの侵入を防止した.慣行区は, 化学肥料や農薬を使用して水稲栽培を行った.アイガモの放飼による除草効果は極めて大きく, 慣行区とほぼ同様の収量を得た.アイガモの放飼による除草効果が顕著であった理由は, アイガモの雑草摂食と水掻きにより土壌表面を撹拌したことと濁り水の効果によると思われた.1994年の結果では, 無処理区はアイガモ区に比べ雑草の発生が多く, 収量の低下が認められた.しかし, 1996年の結果では, 雑草の発生が少なくアイガモ区と慣行区では収量に差がなかった.このことからアイガモの放飼を続けると土壌中の雑草種子数の減少にともなって, 雑草の発生個体数が減少し水稲と雑草の競合が小さくなるものと考えられる.アイガモの放飼は, 水稲の稈の形質には影響をおよぼさなかった.しかし, 無処理区やアイガモ区の稈は, 肥料として有機質肥料を使用しているため, 慣行区に比べ第4, 第5節間が短く, 第3節間の短径が大く, 葉鞘付挫折モーメントや倒状指数も小さくなり, 慣行区に比べて耐倒状性が高まったものと思われた.

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