大気汚染の作物に対する不可視障害は, 見かけの光合成速度を低下させ, これが中心的な役割となり減収へ結びつくと考えられている.そこで, ムギ類4種合計67品種を供試し, 二酸化硫黄処理が見かけの光合成速度に及ぼす影響を種類別に評価した.穂ばらみ期後期の個体に二酸化硫黄を約2.6mg SO2m13(約1.0ppm)を含む空気で30分処理し, その後約30分間清浄な空気で置換した.この一連の操作における二酸化硫黄処理前, 処理中および処理後の光合成速度を連続測定した.二酸化硫黄によりすべてムギ類の光合成速度は低下し, その割合を示す阻害率はハダカムギ45.6%>コムギ38.6%>六条オオムギ31.5%>二条オオムギ28.4%の順に大きくなった.処理後光合成速度は徐々に増加したが, 処理前の値までは回復しなかった.処理前光合成速度に対する割合で示される回復率は, 種類, 品種による相違は小さく90%前後の値を示した.以上より二酸化硫黄の影響はムギ類の種類ごとに異なり, 特にハダカムギ光合成速度の阻害が著しいことがわかった.今後は二酸化硫黄に対する耐性がムギの種類や品種により異なる要因を解析する必要がある.