日本作物学会紀事
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フィコエリトリンを利用した簡易積算管型日射計の試作と作物個体群内の日射透過量の測定
山本 晴彦本条 均鴨田 副也鈴木 義久早川 誠而
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1998 年 67 巻 3 号 p. 401-406

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抄録

紅藻類の葉緑体から抽出したフィコビリン色素蛋白質の一種であるフィコエリトリンを用いて, 感光によるフィコエリトリンの透過率の変化から作物個体群内の透過日射量を簡易に測定する方法について検討した.フィコエリトリン色素溶液は, 光合成有効放射域内の550~560nm付近に感光波長帯の最大域が認められた.外径22mm, 長さ100cmのアクリルパイプに幅15mmの受光窓を設け, これ以外は白色塗料で遮光処理を施し, フィコエリトリンを封入した.屋外での夏季と冬季の測定結果から, 管型日射計により測定した積算日射量の実測値とフィコエリトリンの透過率の間には高い正の相関関係が認められたが, 季節間で直線の傾きに大きな差異が生じた.人工光気象室で室内気温を10℃から5℃間隔で30℃まで設定し, フィコエリトリンの温度依存性について検討した結果, フィコエリトリンの透過率と積算日射量の関係は各温度ごとに2次曲線で近似でき, フィコエリトリン色素溶液の透過率と測定時間帯の気温の平均値を説明変数に用いて積算日射量を推定できることが明らかになった.この関係式を用いて屋外における作物個体群内に透過された日射量の積算値を推定したところ, 実測値と推定値はほぼ1:1のライン上に分布しており, 両者の間には高い相関関係が認められることが明らかになった.

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