抄録
水稲の育苗に先立って行う種子消毒の廃液が環境汚染の観点から問題となっている.そこで, 著者らは種子消毒を行ったフェニトロチオン(1000倍液)およびペフラゾエート・オキソリニック酸(200倍液)を含む廃液の希釈率を0, 2, 5, 10, 20倍(対照区は井戸水)として, 育苗箱床土に散布して処理する方法を検討した.出芽ユニットから出した際, 移植の際, およびポットならびに本田で栽培した際の生育と収量に関わる形質を比較したところ, 出芽には何ら影響は認められなかったが, 移植時までの生育において, 特に根の伸長抑制があり, 10倍以上の希釈が必要であった.実際の田植え機利用を考慮すると, 根のマットが十分に形成される20倍以上の希釈が好ましかった.また, 廃液による苗床時の悪影響は移植以降には解消した.さらに, 環境基本法での要監視項目にあるフェニトロチオンの濃度も基準値より十分に低くなることが推察された.