日本作物学会紀事
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栽培条件が穂上位置別の米粒のタンパク質含有率に与える影響
松江 勇次尾形 武文
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1999 年 68 巻 3 号 p. 370-374

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抄録
低タンパク米生産技術の確立のための基礎的知見を得るために, 栽培条件と米粒のタンパク質含有率との関係を穂上位置別から検討した. 米粒のタンパク質含有率は, 栽培条件の違いに関係なく下位穎花は上位・中位穎花に比べてタンパク質含有率は高かったが, 倒伏区を除く他の栽培条件では上位穎花と中位穎花との間には有意な差は認められなかった. 栽培条件別では上位, 中位, 下位穎花ともそれぞれ倒伏区が最も高く, 次に晩期区が高く, 無窒素区は最も低かった. 栽培条件の違いによる米粒のタンパク質含有率の差を穂上位置別にみると, 最大で上位穎花は2.2%, 中位穎花は3.2%, 下位穎花は4.1%と下位穎花は変異の幅が大きかった. 栽培条件と上位, 中位, 下位穎花をこみにした場合の粗玄米千粒重と精米中のタンパク質含有率との間には負の相関関係が認められ, 一方, タンパク質含有量との間には正の相関関係が認められた. このことから, 粗玄米千粒重が軽い穎花においてタンパク質含有率が高いのはタンパク質含有量が多いためではなく, デンプンの蓄積量が少なかったことによる結果と考えられた. このため, 穂上位置の違いによる米粒のタンパク質含有率の違いは開花の早暁に関係した粒へのデンプンの蓄積量を示している粗玄米千粒重の差による影響と考えられた. 以上の結果から栽培条件の違いによる米粒のタンパク質含有率に対する影響は穂上位置からみて, 開花の遅い下位穎花の米粒に強くあらわれ, 上位穎花の米粒への影響は弱いことが明らかとなった。
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