抄録
イネ (Oryza sativa L.) の出芽と苗立ちの良否に関与する諸要因を探るため, 全世界から収集された FAO-Designated Germplasm 207 品種 (インド型137品種, 日本型56品種, 生態種不明14品種) を供試した. 第1実験では, 粒状床土を詰めたディスポカップ (300mL) を用いて実験を行った. 播種深度は3cmとした. 幼植物は30/25℃の自然光型ファイトトロン内で生育させ, 播種後3週目に苗立ち率を調査した. その結果, 80~100%の良好な苗立ち率を示した品種は, 13品種であり, 全供試品種の6.3%であった. その内訳は, インド型7品種, 日本型6品種であり, 日本型の方がインド型よりも相対的に高い比率を示した. 第2実験では, 第1実験の結果をもとに75品種を選び実験に供した. 播種深度1cm区および3cm区の二つの試験区を設け, 第1実験と同じ実験条件下で生育させた. 播種後, 1, 2, 3週目に, 出芽率, 草丈, 葉齢等を測定した. 播種後2週目に第2葉身に含まれる葉緑素含有量を, 播種後3週目に苗立ち率を, それぞれ調査した. その結果, 苗立ち率は播種後1週目および2週目の1cm区および3cm区の草丈, あるいは葉位との間に有意な相関を示した. また, 苗立ち率は, 播種後2週目の1cm区および3cm区の第2葉の葉緑素計値との間に有意な相関を示した. なお, 苗立ち率と種子重との間には有意な相関はなかった. 従って, 苗立ちの良否には, 葉の緑化の遅速が影響を及ぼしていることが示唆された.