日本作物学会紀事
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コムギの発育日数の変動要因の解析と生育期予測 : 発育日数の実態と早生化
江口 久夫島田 信二
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2000 年 69 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

コムギの生育期は品種・播種期・年次により変異し, 品種間差と播種期間差は生育初期の播種~幼穂分化相の長さや幼穂分化期で大きく, 後期ほど小さく, 成熟期でもっとも小さかった.幼穂分化期以降の発育相の長さは, その発育相の開始期との間に高い負の相関関係が認められた.このことは播種期・幼穂分化期を早めても, 開花期・成熟期が早まらないことと, 同一の生育期でないと発育相の長さの品種間差が比較できないことを示しており, コムギの早生化を困難にしている原因と思われた.また, 発育相の長さは平均気温と高い負の相関関係を示したが, 他の気象要因とは, 平均気温と相関があるときに相関が高い傾向があり, 直接関係しているかは特定できなかった.気象要因を説明変数として, 発育相の長さを予測する重回帰式を求めたが, 年次により, 計算方法により異なった式になり, 生理的に意味のある予測式は得られなかった.早生化のための育種素材として出穂~開花相, 開花~成熟相が短い品種を人工気象条件(ファイトトロン)で選抜した.出穂~開花相が短い品種は止葉展開~出穂期間が長い傾向があり, 止葉展開~開花期間で標準品種より短い品種は認められなかった.開花~成熟相ではT.speltaなどが2~4日短く, 早生化の育種素材として有望であった.

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