日本作物学会紀事
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水稲の穂首節間を走向する大維管束の種類と数および横断面積の品種間比較
新田 洋司姚 友礼山本 由徳吉田 徹志松田 智明宮崎 彰
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2000 年 69 巻 1 号 p. 61-68

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抄録

穂重型日本稲(JP), 穂数型日本稲(JN), 中国産日本型稲(CJ), 日印交雑稲(JI), 長稈インド型稲(TI)および半矮性インド型稲(SDI)の計18品種をポット栽培して, 穂首節間を走向する大維管束の種類と数および横断面積を調査し, 品種(群)間で比較した.CJ, JI, TIおよびSDIでは, 大型(L1)および小型(L2)の大維管束が走向していた.L1の数(9.2~13.0)は品種群間で大差はなかった.L2の数(1.3~9.3)は品種群間差が大きかった.L1とL2の合計は, SDI>TI>JI>CJ>JP>JNの順に多かった.1次枝梗数に対する大維管束の数の比(維管束比)は, JPおよびJNでは1程度であったが, JI, TI, SDIではL2の数が加わった分, 1を大きく越えた.1つのL1における全体および師部横断面積は, JPおよびJNに較べて, JI, TI, SDIで大きい傾向にあった.穂首節間を走向するすべての大維管束の全体および師部の横断面積は, いずれも, SDI>TI, JI>CJ>JP>JNの順で品種群間差異が大きく, L2が走向する品種群で大きかった.水田でJP(コガネマサリ)およびDSI(桂朝2号)を穂肥窒素量を増やして栽培したところ, 穂首節間を走向するすべての大維管束の全体および篩部の横断面積が大きくなる傾向が認められた.今後の水稲育種では, 稲首節間を走向する大維管束の横断面積の拡大, ならびに小型の大維管束の走向による光合成産物の輸送体制の強化が1つの育種目標になると考えられた.

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