日本作物学会紀事
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アフリカイネ, Oryza glaberrima Steud., の個葉光合成における窒素利用効率の種特性
田川 毅明平尾 健二窪田 文武
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2000 年 69 巻 1 号 p. 74-79

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抄録

異なる窒素濃度で水耕栽培した西アフリカ産のOryza glaberrima Steud.4系統を葉身窒素含量の変化に伴うガス代謝, 光化学系最大量子収率(Fv / Fm)ならびに炭酸固定酵素(リブロース1, 5二リン酸カルボキシラーゼ / オキシゲナーゼ, Rubisco)活性等についてO.sativa L.4系統と比較し, O.glaberrimaの光合成における窒素利用効率を検討した.単位葉身窒素含量当たりの光合成速度(窒素利用効率)には明らかな種間差が認められ, 高窒素濃度条件下では, O.sativaに比較し, O.glaberrimaでは葉身窒素含量が増加せず, 光合成速度が向上しなかった.一方, 低窒素濃度条件下ではO.glaberrimaの窒素利用効率が有意に高かった.O.sativaの気孔伝導度は葉身窒素含量が減少すると低下したが, O.glaberrimaでは高い気孔伝導度を維持した.また, 葉肉伝導度もO.glaberrimaで高く, 本種の光合成速度が低窒素栽培条件下でO.sativaよりも高く維持されたのは両伝導度がともに高いことに起因するものであった.葉肉伝導度を支配制御する要因であるクロロフィル含量やFv / FmおよびRubisco(Total)活性の測定値に種間差は認められなかった.しかし, O.glaberimaは単位Rubisco活性に対する光合成効率が高く, in vivoでのRubisco活性化率が高いものと推察された.このようなO.glaberrimaの光合成特性はO.sativaの光合成, 特に低窒素施用条件下での個葉光合成改良のために導入されるべき有用な遺伝形質であると考えられた.

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