植物の茎葉部分を切除すると切口から溢泌液が出てくる出液現象は, 根圧による能動的吸水に基づくため, 根系全体の生理的活性の指標となる可能性が高い.そこで本研究では, 圃場で慣行栽培したトウモロコシを用いて, 出液速度の基礎的特性を検討した.出液速度を測定するために茎葉部を切除すると, 生育段階や時刻に関係なく, その直後から出液速度が低下したことから, 茎葉部を切除した影響が比較的早い時期から現れることが明らかとなった.そこで, 毎回異なる個体について茎葉部を切除した直後の出液速度を調査したところ, 午前8時前後に最大値となる日変化が認められた.この結果を踏まえて, 午前中の一定時刻における出液速度を生育初期から登熟にかけて調査したところ, 雄穂が出現する(播種後50日目)ころまで増加し, それ以降は減少した.根系形成をみると, 茎の頂端側から出現した節根ほど節当たりの数が多く, 直径が大きかったが, 雄穂が出現するころには新しく出現してくる節根の数が少なく, 個体当たりの根量は生育に伴ってS字曲線を描いて増加した.個体当たりの出液速度と根系のいくつかの形質との関係を検討したところ, 雄穂の出現時まではそれぞれの間に密接な高い正の相関関係が認められたが, 雄穂が出現してから成熟までは関係が明らかでなかった.出液速度は根量と単位根量当たりの出液速度によって規定される, という視点から解析を進めた結果, 単位根量当たりの出液速度は播種後35日目ころまで増加し, その後減少することが明らかとなった.