日本作物学会紀事
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浸水によるマメ科作物種子からのアミノ酸および糖の溶出
鄭 紹輝川畑 美保
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2000 年 69 巻 3 号 p. 380-384

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抄録

ダイズを含むマメ科作物8種66品種を供試し, 20℃, 24時間浸水処理によって種子から溶出したアミノ酸や糖の種類および量を高速液体クロマトグラフで分析し, 溶出の難易の種間差や, 種子の特徴との関係について検討を加えた.その結果, 供試した全作物において種子からのアミノ酸および糖(ケツルアズキを除く)の溶出が認められた.まずアミノ酸については, 検定に用いた17種のうち溶出が認められたのはダイズで最も多く16種, 次いでインゲンマメで14種, ケツルアズキで8種などの順で, タケアズキがもっとも少なく2種類であった.またその溶出量はダイズで最も多く(種子1g当り1020μg), タケアズキでは最も少なかった(同71μg).なお, 溶出量が最も多かった成分はアルギニンであり, 溶出した総アミノ酸量の32%(インゲンマメ)~80%(タケアズキ)を占めていた.糖については, 溶出がみられたのは主にグルコース, フルクトースであったが, ダイズとインゲンマメでは溶出した品種の割合が高く, リョクトウおよびタケアズキではわずか1品種, ケツルアズキでは溶出した品種はみられなかった.また溶出量は, アミノ酸の場合と同じくダイズでもっとも多く, (種子1g当り2065μg), 次いでインゲンマメ(同1297μg)であり, 両作物とも糖の溶出量はアミノ酸の約2倍であった.このような溶出量の多少は, 種子元来の各成分の含有量とは関係がなく, 吸水の過程でリーチングの難易さを示唆したものであると考えられた.なお, ダイズ29品種においては, アミノ酸および糖ともに溶出量は種皮の厚さとは関係がなく, 種子の大きさとの間に有意な正の相関関係がみられたが, 中には不検出の品種から糖では種子1g当り最多約8800μgの溶出の品種までみられ, 溶出程度の品種間差も著しいことが示唆された.

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