抄録
レンゲ立毛中水稲不耕起播種栽培を継続するとレンゲ植生が経年的に劣化し, 3年も継続するとその植生を前提とする本栽培が不能になるほどに劣化する現象について検討した.この栽培を継続すると, コンバインから地表面に排出された稲わらをレンゲとともに水稲播種前に鋤込む耕起播種栽培を繰り返した場合に比べ, 春のレンゲ草冠被度が著しく劣化し, その劣化は水稲収穫後に地表面の稲わらを取り除くと小さかった.また, 劣化は経年的に大きくなり, 継続3年目には春のレンゲ草冠被度が15%程度になった.春のレンゲ草冠被度は苗立ちレンゲの生存率と高い正の相関関係にあった.そして, 稲わら被覆による物理的障害のなかった本栽培を2年継続した圃場から採取した土壌のレンゲ, あるいは稲わらがレンゲを被覆しないで地表面のみを被覆したポットの移植レンゲも, 幼植物の生育, 特に根部の生育が阻害され, 枯死する個体が生じた.これらのことから, レンゲ立毛中水稲不耕起播種におけるレンゲ植生の劣化は地表面を被覆した稲わらから放出されるアレロパシー物質による生育阻害によって生じたと推察された.また, この栽培を3~4年も継続するとレンゲの苗立ちもやや低下し, 稲わらから放出されるアレロパシー物質によるレンゲの発芽低下も推察された.以上から, この栽培では経年的に, 地表面を被覆するコンバインの排出稲わらが増加し, それに伴って稲わらから放出されるアレロパシー物質が増加し, レンゲは発芽と初期の生育が阻害されて, 植生が低下すると推察された.