抄録
レンゲ立毛中に水稲を不耕起播種する栽培を継続するとレンゲ植生が経年的に劣化する.この原因の1つとして地表面を被覆している稲わらから生育阻害物質が滲出し, レンゲの生育を阻害することが考えられたので, 稲わらを蒸留水で振とうして得た水抽出液がレンゲの発芽・生育・生存に及ぼす影響を検討した.稲わら水抽出液によってレンゲの発芽が阻害された.また, 水抽出液に播種したレンゲは生育, 特に根の生育が阻害され, その濃度が高いと根が伸長せず, 枯死した.プラスチック製トレイの土壌表面に水抽出液を含んだ稲わらを被覆した中に播種したレンゲは水抽出液を含まない稲わらを被覆した場合に比べ生育, 特に根の生育が著しく劣り, 播種21日後には約70%が枯死した.さらに, 土壌表面を風乾稲わらで被覆あるいは被覆しないポットを夏期の間湛水状態にし, 落水20日後に子葉を展開したレンゲを移植した実験では, 前者の生育, 特に根の生育が後者に比べ劣った.これらの事実から, 地表面を稲わらが被覆するこの栽培のレンゲは, 降雨や水稲栽培期間中の湛水によって稲わらから滲出した水抽出物によって発芽や幼植物の生育が阻害され, 生育阻害の著しい場合には枯死に至ることが明らかになった.また, この水抽出物は土壌地表面に残留して経年的なレンゲ植生の劣化をもたらすと推察された.