日本作物学会紀事
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温室と高温年の圃場で栽培した水稲における玄米品質低下程度の比較
飯田 幸彦横田 国夫桐原 俊明須賀 立夫
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2002 年 71 巻 2 号 p. 174-177

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抄録

登熟期に高温に遭遇しても玄米品質が低下しにくい品種を育成するため,水稲を高温の温室内に栽培することで,高温年の圃場条件での背白米,基白米および乳白米の発生を再現できるかどうかを検討した.温室内に設置したベンチ(高さ70cm)に高さ15cmの枠を設け,ビニールを敷いてプール状にした中に水田土壌をいれ,高温による玄米品質低下程度が異なる水稲12品種を畦幅13cm,株間5cmで10個体ずつ栽培した.いずれかの品種が出穂してから全品種が成熟期に達するまでの間高温処理を行った.各品種の登熟期間中の平均気温は27.6~28.3℃(平均昼温29.7~30.1℃,平均夜温25.3~26.3℃)であった.成熟期に各品種8個体について,背白米と基白米を合計した粒数の全粒数に対する割合すなわち背白・基白米発生率と,乳白米発生率を調査した.温室における背白・基白米発生率は,有意な品種間差異があり,また高温年である1999年の水田圃場における発生率との間に高い正の相関関係が認められた.温室における乳白米発生率は品種間で有意差が認められなかった.このことから,高温年の圃場条件における背白・基白米発生率の品種間差異については,水稲を温室内で栽培し登熟期に高温処理を行うことによって再現し評価できることが明らかとなった.この評価により,背白・基白米の発生に対する耐性を判定するための基準品種として,越路早生(強),こころまち(やや強),あきたこまち(中),ひとめぼれ(やや弱),初星(弱)が選定できた.

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