日本作物学会紀事
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日本産および外国産香り米品種の玄米外観品質およびアルカリ崩壊度
猪谷 富雄
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2002 年 71 巻 2 号 p. 178-185

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抄録
香り米品種の玄米について,外観品質,物理的測定値である白度(反射率)および米質・食味の簡易検査法であるアルカリ崩壊度を調査した.日本産香り米品種(在来種)68,外国産香り米品種21ならびに対照としての日本産普通米品種18,計107品種の玄米の外観品質を検査した結果,日本産香り米品種は,他の品種群と比べて登熟不良による不整粒の発現が多いため検査等級がほとんど等外または規格外で,白亜質米率が著しく高く,白度も高かった.外国産香り米は,検査等級,白亜質米率,白度のいずれも日本産香り米品種と普通米品種の中間あるいは香り米品種に近い値を示した.玄米各5粒をカミソリを用いて半分に切断し,直径6cmのシャーレ内で1.25%および1.5%の水酸化カリウム水溶液10mLに浸漬した.室温で24時間放置後,米粒の崩壊程度を観察し,1(無変化)から10(完全崩壊)の級に分類した結果,日本産香り米品種はアルカリ崩壊度の産地間差異が大きく,東北産<関東・北陸産<西日本産の順に大きくなった.崩壊度との間に強い正の相関がみられる到穂日数を考慮しても,品種群全体として普通米品種より大きく,この原因として腹白等デンプンの充実が不良な部分が多いことが考えられた.一方,外国産香り米品種は粒型から分類すると長粒型が主であるものの多くの生態型に広く存在することがわかった.全体的に崩壊度は小さく,また変異の幅が日本産香り米品種より著しく大きかった.従って,香り米を普通米へ混米して食事に,あるいは育種素材として利用する場合は,米の硬軟質性を考慮する必要がある.
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