抄録
1999,2000年に東北以南の日本水稲14品種と中国雲南省3品種について短日処理による到穂日数の短縮が開花期耐冷性に及ぼす影響を検討した.自然日長のみの区と5.5葉期頃から14日間,8時間日長の短日処理(処理期間以外は自然日長)を行った短日処理区を比較した.冷温処理は15×5×10cmの方形ポットに主桿8本植の材料を50%遮光幕付き人工気象室で出穂日から15日間,17.5℃で行った.その結果,短日処理区では自然日長区に比べ到穂日数が3~54日,平均で28日(n=17)短くなった.自然日長区の到穂日数が長い品種ほど短日処理による到穂日数の短縮期間が長かった(r=0.926, n=17).開花期耐冷性検定の処理開始日となる出穂日の分散の大きさを,各品種の到穂日数から最短の品種の到穂日数を減じた日数の標準偏差により検討すると,短日処理区は自然日長区よりも小さかった.短日処理による開花期耐冷性の変動値(冷温処理区の稔実歩合について短日処理区から自然日長区を減じた値)は自然日長区の到穂日数が長く,短日処理による到穂日数の短縮程度が大きい品種ほど大きく(それぞれr=0.666, 0.536,いずれもn=16,以下同じ),また,短日処理による出穂前3~後5日の平均日照時数の変動値が大きい品種ほど大きい傾向があった(r=0.741).しかし,両区の開花期耐冷性検定結果の間にはr=0.830の有意な高い正の相関関係があることから,短日処理は検定結果を大きく変動させずに材料養成期間と検定処理期間を短縮できるため,検定の労力を軽減するために有効と思われた.