抄録
色弱者向けの画像強調システムにおける適切な色強調度を推定するために,先行研究では先天性1型及び2型色弱者の彩度知覚特性を一般色覚者と比較した(佐々木ら,日本色彩学会第46回全国大会’15).色弱者の被験者数が十分とは言えなかったので,本研究でさらに被験者数を増やした.先行研究と合わせて,1型色覚7名,2型色覚10名,一般色覚14名の被験者を得た.実験では,事前に被験者ごとに色刺激の知覚的明るさをそろえた色刺激対を用いて,その知覚的彩度差を無彩色刺激の明度差(輝度差から算出した⊿L*)でマッチングした.これまでに得られた結果(⊿L*)を,テスト有彩色対の色差(CIE1976CIELABとCIEDE2000色差式)に対してプロットしたところ,CIEDE2000色差式に対しての方が明確な傾向が表れた.先天性1型色弱者の,赤と緑系刺激対の知覚的彩度差は,一般色覚者の約60%,黄系は70%,青系は90%であった.先天性2型色弱者については,赤と緑系刺激対の知覚的彩度差は,一般色覚者の約60%,黄系と青系は80%であった.個人差が大きいので色強調度を推定に応用するためにはさらなるデータの蓄積が必要である.