日本色彩学会誌
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41 巻, 3+ 号
日本色彩学会第48 回全国大会[東京]’17 発表論文集
選択された号の論文の65件中1~50を表示しています
SUPPLEMENT
  • 渡辺 修平, 曽根 拓郎
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 1-4
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/05
    ジャーナル フリー
     製品の質感の良否を決める非常に重要な要素の1つに,物体表面に写り込ん だ像の綺麗さを表す写像性がある.写 像性評価はJIS K 7374 や,レーザスキャン方式を用いたものが知られているが,接触式のため表面を傷つける恐れが ある.また,目視検査では表面の色によって写像性評価が異なるが,表面反射特性のみを計測しているため同じ評価 値になってしまうといった問題があった.以前筆者らは,ソリッドブラック塗装における非接触での写像性評価法を 開発したが,有彩色やメタリック塗装への適用は考慮しておらず残課題としていた.上記課題を解決するため,今回 カラーメタリック塗装を対象とした非接触かつ目視相関の高い評価法開発を行った.評価法開発では,ハイパースペ クトルカメラとエッジパターンを用いたシステムを構築した.評価式は,写り込んだ像とサンプル表面の色差が大き いほど人は写像性が悪く感じるという考えの元,サンプル表面の色とブラックポイントからの色差ΔE で補正するモ デルを提案し,官能評価結果との寄与率が約0.9 と非常に高い相関を得ることができた.
  • 水谷 空, 天谷 貴, 逢澤 健吾, 川嶋 なつみ, 石丸 伊知郎
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 5-6
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/05
    ジャーナル フリー
     車体などの工業製品,漆器や壺などの工芸品の様な立体面上の色材の物体色と,表面反射である光沢を光学的に分離して計測する立体分光測色イメージングを提案している.  まず,我々は,広視野分光イメージングが可能であり,可搬性の高いハイパースペクトルカメラの提供可能となる 結像型2 次元フーリエ分光法を提案してきた.本手法は,准共通光路型位相シフト干渉法であることから機械的な振 動に高い頑健性を有している.その為,機械的な除震機構が不要であることから小型軽量化を実現できた.また,提 案する画角補正アルゴリズムにより,例えば魚眼レンズを用いれば全方位の分光イメージングも可能となった.  本報告では,車体のような立体物の表面反射光である光沢と,色彩からの内部拡散反射光を物理的に分離して計測 する直交偏光照明法について述べる.また,光沢は色材による光吸収を受けていない表面反射光で有ることから,そ の分光特性から光源色を同時に取得することができる.
  • 川口 昭夫, 二宮 洋文
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 7-9
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
    ダイヤモンドに代表される宝石試料の客観的な評価法の探索,または官能評価に対応した物理的指標を探索するために,多面体形状の試料(カット研磨されたダイヤモンド)に直進光を入射させる際に生じる散乱光束群の空間分布を計測した.今回の報告は立体角Ωの度数分布以外に散乱光強度の間接的な測定・評価を試みた.1本の直進入射光は試料によって光路分割され,数千本の外部への散乱光として散乱されるため,散乱光を直接的に強度測定することは困難である.そこで試料位置と焦点とを一致させた放物面スクリーンに投影された「輝点」の観測強度から大まかな強度分布を評価した.これは試料からの散乱光が投影される「輝点」という位置において,散乱光と観測方向とが正反射関係であることを利用した近似的・統計的な強度評価法と考える.その結果,官能評価から与えられるとされている”Cut”グレードに対応する物理的パラメータとして,散乱光群の統計的な強度変化にも対応する傾向が認められた.具体的には低グレード試料には低Ω成分に比較的高強度な成分が多く,高グレード試料には「指数則」から逸脱する高Ω成分が目立つ傾向がある.
  • 酒井 英樹, 磯見 麻衣, 伊與田 浩志
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 10-11
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     平らで均一な測定用試料を作ることが困難な天然由来の材料などの物体の色彩及び光沢を測定する方法を提案する(光沢測定はその2で報告).複雑形状の試料をそのまま測定するには,非接触で行う必要があるが,照明は別途用意しなければならず,一般に測定精度を担保することが難しい.この問題に対して,我々は積分球を模した内壁が白色のドーム型照明装置を作成し,常に一定の照明条件とすることで,非接触であっても再現性よく測色できることを示した(既発表).しかし,ドーム型照明では,高光沢の試料は,試料面の傾きに係わらず,測色値に照明光の正反射成分が必ず含まれる.すなわち,色彩の測定には,正反射成分を含まない測色(SCE)と含む測色(SCI)とがあるが,従来のドーム型照明では,SCI測定しかできなかった.そこで,その改良版として,ドーム内に可動式の光トラップ板を設置することで,SCEとSCIを切り替えて測定することを試みた.その結果に基づき,光トラップ付きドーム型照明装置を,SCE / SCIの同時測定が可能な非接触式測色システムとして提案する.
  • 磯見 麻衣, 酒井 英樹, 伊與田 浩志
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 12-15
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     平らで均一な測定用試料を作ることが困難な天然由来の材料などの物体の光沢を測定する方法を提案する.その1では,ドーム型照明装置に可動式の光トラップ板を設置することで,正反射成分を含まない測色(SCE)と含む測色(SCI)が同時に行えることを報告したが,SCEとSCIの明度差は,正反射成分によって生じていることから,その差分から正反射成分が抽出できると考えられる.その2では,この考えに基づき,SCEとSCIの明度差から試料面の光沢度を算出する方法を検討した.光沢度が既知の球体試料を測定対象として,明度差から20度鏡面光沢度を予測する実験式を作成した結果,明度L*が80未満の物体について,接触式光沢計で測定した値と15以内で一致した. 本測定法の特徴として,複雑な形状の試料について,その形のままで,各部位の光沢度,つまり,光沢の二次元分布を測定できることが挙げられる.
  • 天羽 康介, 若林 一道, 中村 隆志, 矢谷 博文
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 16-19
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     近年,歯科治療において患者の口腔内の審美性に対する要求が高まり,特に前歯部においては,より天然歯に近似した色調・光透過性を有する治療が求められている. これまで,定性的・経験による評価として天然歯や歯冠修復材料の色調の観察などの研究が行われてきた.しかし,定量的な評価としてどのような機序で天然歯や歯冠修復材料が色調を発現しているのかを解析した研究はこれまでなされていない. そのため,光の入射・反射・吸収・散乱などに対する経路や量,またその各々がどのように光学的に干渉しあうのかを定量的に分析できれば,審美歯科修復に使用する歯冠色材料に付与すべき光学特性について,極めて有益な知見を得ることができると考える. そこで本研究では光線追跡シミュレーションソフトウェアに用いるBRDF・BTDFを算出するため,歯冠補綴治療に用いる各種審美歯冠補綴材料の光学特性を,変角光度計,紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定した.本実験結果は,歯科審美領域の治療において,各種歯冠色材料を用いた歯冠補綴装置の光学特性を解析するために有用であると考えられた.
  • 田代 知範, 三浦 祐樹, 永井 岳大, 山内 泰樹
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 20-22
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     照明の本来の役割は,暗闇を照らし使用者の視認性や安全性を確保することである.近年,照明は本来の役割に加え使用者に合わせた居住空間を演出する役割を兼ね備えるようになってきた.さらには,シーンとしての効果に加え,快適性や作業効率の向上など様々な付加価値を求めるようになり,LED照明の普及に伴い,その多様性や重要性は増加し,社会的にも浸透してきている. 照明の色温度が快適性に影響を与えることは周知の事実であり,照明の色温度と照度との対応関係において,快不快の境界を示すKruithofのカーブは照明設計の現場で広く用いられてきた.しかし,Kruithofの実験は,実験方法,色順応の影響,快適の定義などいくつかの問題点が指摘されている.また,黒体軌跡を外れた照明に対して快適性や作業性に与える影響を調査した研究は少ない. そこで本研究は,照明光色の黒体軌跡からの色差が快適性や作業性に与える影響を調査するために,15種類のナローバンドなLEDによる照明環境シミュレート光源を使用して,快適性や作業性に対する主観評価実験を実施した.その結果より,各評価項目と照明光色の黒体軌跡からの色差との定量的関係について検討を行う.
  • 鷹野 雅弘, 溝上 陽子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 23-25
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     人間の視覚は加齢に伴い変化することが知られている.変化の1つとして白内障が挙げられる.白内障になると視界にかすみが生じ,結果として視界の彩度が低下する.高橋らの研究では,かすみが生じた瞬間に彩度低下を補正する効果の存在を明らかにした.しかしこの研究で使用した画像は1種類であり,結果の一般性についての検証が不十分であった.本研究では,かすみに対する順応時間と彩度知覚の関係について,より詳細に検証した.実験では,眼前にフォギーフィルタを設置後,0秒から180秒の間で設定時間ごとにテスト刺激を各2秒間呈示し,被験者の応答を記録した.彩度を段階的に変調させた各テスト刺激に対し,「自然に見える」と「色あせて見える」境界(低彩度側)と「自然に見える」と「色鮮やかに見える」境界(高彩度側)を測定することで,画像の鮮やかさが自然に見える範囲を求めた.その結果,瞬間的な補正効果が先行研究と同様に得られた.さらに,かすみがある場合,かすみがない場合に比べて自然に見える範囲が増加した.時間的な変化では,高彩度側はフィルタありの場合の見えに近づき,低彩度側はより彩度が低い画像も自然に見えるようになった.
  • 田中 佑樹, 平井 経太, 田中 緑, 堀内 隆彦, 岡嶋 克典
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 26-27
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     蛍光は光を吸収して長波長で発光する特性を有しており,一般の反射物体とは異なる独特の蛍光らしさ(以後,蛍光感と称す)を知覚することができる.著者らの先行研究において,蛍光実物体と測色的に等しい画像をモニタ再現しても,再現画像の蛍光感が低下する結果が得られていた.近年,錐体や桿体とは異なる内因性光感受性網膜神経節細胞(以下,ipRGCと称す)が発見され,ipRGCが明るさ知覚に関与する報告がされ始めている.本研究では,ipRGCが蛍光感知覚に及ぼす影響を調べた.実験の刺激には,著者らが開発した分光プロジェクタを利用して,所望の分光分布を有するパッチ画像を生成して用いた.実験では,蛍光感を知覚し易い緑色の分光分布を基準として,ipRGCの吸収率のみを変化させて三刺激値は等しい刺激(ipRGC刺激)と,スペクトルの形状は変化させずにパワーのみを変化させた刺激(Light flux刺激)を,中心視と周辺視により恒常法で評価した.実験の結果,Light flux刺激の相対刺激量の変化に対して蛍光感の変化はほとんど見られなかったが,ipRGCの相対刺激量が大きいほど,蛍光感知覚が向上することが確認された.さらに,ipRGCの密度が高い周辺視の方が,中心視よりも顕著な結果が得られた.
  • 永井 岳大, 山田 尚純, 川島 祐貴, 山内 泰樹
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 28-31
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     本研究では,視覚系による複雑な画像特徴の取得を妨げるような短時間呈示される物体画像を用いた心理物理実験を行い,様々な質感属性と低次画像特徴との関連性を明らかにすることを目的とした.検討する質感属性として光沢感,暖かさ感など7種類を用いた.実験では,様々な素材でできた物体の写真に対して各質感属性に対する知覚量を計測した.この際,刺激呈示時間を実験変数とし,刺激呈示時間の短縮による質感知覚精度の劣化の大きさを定量化した.その結果,暖かさ感の知覚では他の質感属性と比較して刺激呈示時間の影響が顕著に小さく,暖かさ感の知覚は低次画像特徴に強く依存することが示唆された.続いて,暖かさ感知覚と低次画像特徴の関連性をさらに明らかにするため,a. 暖かさ感知覚と画像統計量の相関解析,b. 特定の低次画像特徴を欠落させた画像に対する暖かさ感知覚の測定,を行った.その結果,暖かさ感知覚は物体の平均色度と強く相関するものの,色情報がなくても他の情報に基づき安定して応答が可能であった.これらの結果から,複数の低次画像特徴を手がかりとして相補的に用いることで暖かさ感が安定して知覚される可能性が示された.
  • 稲葉 隆
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 32-33
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     色彩属性のうち彩度と明度が触感判断に影響することを色彩とテクスチャーを継時提示する実験によって検討した.色刺激は有彩色の彩度系列2色と無彩色の明度系列3色を用い,触刺激は表面に微細な凹凸をもつ樹脂版3種類を用いた.粗滑感評定は「なめらかな-ざらざらした」の5段階尺度でおこない,刺激提示から粗滑感評定までに要した時間を測定した.刺激の提示は,(1)色刺激と触刺激それぞれの単独提示,(2)色刺激を見てから触刺激を触る継時提示の順とした.その結果,単独提示試行で,彩度と明度により粗滑感が喚起され,彩度あるいは明度の低さは粗さと有意に相関した.また“見てから触る”日常的な行為を想定した継時提示試行でも先行提示された色彩によって実際にテクスチャーを触った上での粗滑感の判断は影響を受けた.彩度系列では低彩度色によってテクスチャーの粗滑感はより粗い方向に判断され,明度系列の灰色と黒も同様であった.このような傾向とは逆に,高明度色によってテクスチャーの粗滑感はより滑らかな方向に判断された.
  • 日髙 杏子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 34-35
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     本発表は,色彩文化の視座から,日本の伝統的配色を「ハレ」と「ケ」に分類する試論である.日本人が食文化のなかで色彩を祝祭,そして日常と分けてきたのではないかと仮説を立てる.「ハレ」と「ケ」は,民俗学者柳田國男が見出した日本文化に底流する世界観として知られる.17世紀にイエズス会士が「日葡辞書」に「ハレ」と「ケ」の概念を記した.文化人類学者ハロルド・C・コンクリンは,フィリピンのハヌノオ族が色彩を「乾燥」「湿潤」によって分類することを発表した.この分類は,乾季と雨季の二季であるフィリピンの気候から生まれた世界観と考えられる. 日本では「ハレ」の配色として,紅白(赤白),金銀,五色,錦があり,「ケ」の配色として,鼠・茶色,藍色がある.このような言説は染織において今までに見るが,本発表では日本の食文化の諸例を通じ,同様な世界観と分類があることを解説する.特に,季節行事にまつわる食事とその配色が世界観と深くつながっている.また,他国との共通性と日本の独自性についても言及する.本研究は公益財団法人前川財団・平成28年度家庭・地域社会教育研究助成によるものである.
  • 國本 学史
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 36-39
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     近代日本において,色彩論は欧米より輸入され,受容される.その過程で,日本画家である田口米作により,『色彩新論』が著された.同書は,当該書が刊行された明治40年前後の,欧米の近代的な色彩論を主に紹介する書籍とは性質が異なる.また,水彩・油彩画家等による絵画技法の解説・入門書のように色彩を説明する書籍とも性質を異とする.米作は著作の中で,色彩理論の解説に加え,日本の色彩文化論的内容を含む独自の視点を示している.これは当時の色彩論的書籍ではあまり見られない特徴である.独特の色彩理論が構築された要因として,米作が浮世絵師出身でポンチ絵師であったこと,美術学校のようなアカデミズムとは距離があったこと,日本画出身者としての問題意識のもとで色彩理論を独自に学んだこと,が挙げられる.一方で,米作は『色彩新論』刊行を待たず早世し,弟子筋へ技術や知識が継承されなかった.田口米作の特異な色彩論の知見は後世に受け継がなかった一方で,その後日本ではマンセル理論等が取り入れられ,日本の色彩論は,さらなる変化を遂げて行った.本論は,田口米作の『色彩新論』成立のこうした諸背景を整理し,その特異性を明らかにする.
  • 吉村 耕治, 山田 有子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 40-43
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     詫び・寂びは,決して過去の芸術作品のみに見られる美意識ではない.21世紀の現在でも,日本文化の基盤を形成している.一般的には,簡素の中にある落ち着いた寂しい感じや,枯淡の境地を表すと考えられているが,その根底には,この世のはかなさや人生のはかなさを感じる無常観が存在している.単に仏教の無常観だけではなく,無常であるがゆえに美しいと感じる美意識(徳)が内包されている.木,土,石,わら,竹などの自然の素材を大切にし,素朴で簡素な原始的芸術の要素を含んでいる.侘び茶を完成させた千利休は,一期一会の精神や心で感じる美しさを大切にしながら自然の造形を活用し,自然界の色合いになじませつつ茶会の道具や懐石,茶室の部分に工夫を凝らすことにより,侘び・寂びの美と心を体現している.侘びの妙喜庵と秀吉の黄金の茶室とは,対極にあるように見えるが,実は不可分で相補的関係にある.侘び・寂びの美意識は,知足の心や風流心の大切さを暗示し,その色彩とは,自然界の素材の色を活用することから,色みや清色を否定し,草木の香りのする簡素な色彩美で,ブラウン(茶色)系やグリーン(緑)系を中心にした渋みのある中間色を表している.
  • 菊地 久美子, 片桐 千華, 溝上 陽子, 矢口 博久
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 44-47
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     顔は部位により肌色が異なることが知られている.肌色の部位差については,これまで多くの報告があり,接触式の測色計により指定部位を測色するほか,デジタルカメラなどの画像色彩計を用いて顔の特定部位を指定し,評価する例などが挙げられる.しかし,これらの方法では指定部位の理解に限定され,顔における肌色分布を連続的に,詳細に把握することはできない.本研究では,顔全体の肌色分布を評価する方法を開発し,肌色分布の加齢変化の特徴および季節変化の特徴を把握することを目的とした.まず,目・鼻・口といった顔のパーツから特徴点を指定し,特徴点から顔の肌色領域を分割した.次に,分割された領域毎に色彩値やメラニン・ヘモグロビンといった肌の色素量の平均値を算出することで,肌色分布を視覚的な分割画像と定量的な分割データの両方で表現する手法を開発した.本手法を20~78歳の女性,522名の顔画像に対し適用させることで,加齢による肌色分布の色彩値の変化を可視化および定量化した.さらに,女性25名の肌色分布の季節変化を可視化した.本研究により,加齢による色変化が生じやすい領域,季節変化が生じやすい領域を明確化することができた.
  • 濱田 一輝, 溝上 陽子, 矢口 博久
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 48-49
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     肌色は,年齢・健康状態・顔印象などの判断に関わる重要な要素である.先行研究で,人は肌の赤みの変化に対して高い感度を示すという特性や,赤みがかった肌の方がより明るく見えるといった特性が報告されている.これらのことから,人は肌(顔)を認識した上で,肌特有の色知覚をしている可能性が考えられる. そこで本研究では,肌色の色分布と知覚の関係性に注目した.日本人女性694名の肌を測定して得られたCIELAB値に対して主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分によって構成される肌色特有の色平面を構築した.そして,肌画像と肌色単色画像をその平面上の8方向に変調し,肌色の弁別閾値を調べた. 実験の結果,肌画像は赤みが増加する方向に対して弁別閾値が小さい傾向が見られた.一方で,単色画像は赤みに対する弁別閾値が特に小さいという傾向は見られなかったことから,肌特有の色知覚があると考えられる.上記の色平面において,皮膚中のメラニン(日焼け等により濃度が増減)とヘモグロビン(血流により濃度が増減)の2つの肌色構成成分の濃度変化を解析した結果,これらの肌色構成成分と肌色の知覚特性との関連も示唆された.
  • 大塚 理子, 溝上 陽子, 矢口 博久
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 50-51
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     美肌に対する人々の関心は強く,色素斑のトラブルに悩む人は多い.色素斑に関する研究も様々行われているが,色素斑の特徴と視覚特性の関係については明らかになっていないことも多い.菊地ら(2015)は,色素斑の個数や面積が色素斑の目立ちに影響を与えることを明らかにしたが,それらの分布パラメータに限定した定量化はされていない.そこで本研究では,色素斑の個数や面積が,色素斑の目立ちに与える影響を調べた.色素斑の総面積や個々の面積を同様に保った状態で色素斑の個数を変化させた画像を作成し,大きい色素斑1個の画像と比較することで,色素斑の目立ちを評価する実験を行った.また,色素斑が同じ個数でも,大きい色素斑を含む条件と,全て小さい色素斑の条件の2種類を行った.その結果,色素斑の総面積が大きい場合よりも,各画像における最大色素斑の面積が大きい場合の方が目立ちの評価は高かった.また,色素斑が同じ個数でも,大きい色素斑を含む場合の方が,全て小さい色素斑の場合より目立ちの評価は高かった.このことから,色素斑の個々の面積が色素斑の目立ちに最も影響を与えると考えられる.
  • Miho Saito, Tadayuki Wakata
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 52-53
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     The purpose of this study was to consider the impact on impression from other people by the change of light and color temperature during makeup corresponding to TPO while focusing on the light conditions during makeup. As the setting conditions of light during makeup, we set two types, one was a warm color condition assuming going to a bar and the other one was a white color condition assuming going to a university. In addition, we used a light assuming their houses as the control condition. We had four subjects put on makeup four times in total, two settings were putting on makeup under a house light and going to a bar and going to a university, and the other two settings were putting on makeup under a warm colored light and going to bar and makeup under a white colored light and going to a university. Afterward, regardless of the light during makeup, we had them put on makeup under a warm colored assuming a bar and under a white colored light assuming a university. We used the average face for each makeup that we created for four subjects as stimulation. We presented the stimulation one by one with iPad Air2 and individually evaluated the impression with SD method including 22 adjective pairs. 100 people participated the experiment. As a result of the factor analysis on the impression evaluation value, two factors were extracted. We named the first factor as Gracefulness Factor and the second factor as Heavy Makeup Factor. In order to show a characteristic per factor of each stimulation, we created a scatter diagram with average factor score. For the impression change of makeup corresponding to TPO, the impact from illuminance was more than the change of color temperature and it was shown that people could give more positive impression by makeup under the condition with higher illuminance.
  • Tadayuki Wakata, Miho Saito
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 54-57
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     In the present study, it aimed to extract common impression dimensions in 3 senses (color, music, and scent) with use of sensory information and examine a relation for each individual sense in the impression dimension. Color stimuli were selected on the basis of PCCS and total 25 stimuli (12 tones, 12 hues, and achromatic color) were used. The study used 30 kinds of scent stimulation mainly as food flavor. It also used music stimulation in 40 music categories selected from the preceding studies. These stimulations had impression evaluation with Semantic differential method (SD method) with 20 pairs of adjectives. In addition, color stimulation was evaluated for brightness and vividness with use of VAS. 37 people participated in the experiment. The study obtained 4 factors after extracting impression dimension by factor analysis. Integrated dimension for brightness and vividness was calculated for color tone stimulation by principal component analysis. The integrated dimension for this result was named as “Brilliantness”. When calculating correlation coefficient between the factor of “Brilliantness” and impression dimension, the study found a high correlation with Factor 1 and 2 in impression dimension; therefore, we decided to focus on these 2 factors. The study categorized each scent stimulation and music stimulation by cluster analysis. As the result, there were 8 groups/11 groups for scent/music stimulation respectively. When focusing on a relation for each color, scent, and music in Factor 1 and 2, the study recognized a distribution to the first/third quadrant for color/scent respectively while music indicated a distribution to the second/forth quadrant in addition to it.
  • Yuki Mihara, Kazuki Hamada, Chanprapha Phuangsuwan, Ikeda Mitsuo, Yoko ...
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 58-59
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     Change of color appearance of invariant psychophysical color, namely a color of same chromaticity coordinates, was investigated. A subject observed a color chip placed in a test room illuminated white through a small window from a subject room illuminated by white, red, yellow, green, or blue light and assessed the color of the chip by the elementary color naming. With the white light he perceived the original color of the chip and with colored lights he perceived color after the chromatic adaptation to the light in the subject room. The color appearance shown on the polar diagram used in the opponent color theory indicated that the color of chips shifted away from the adapting color.
  • 杉山 朗子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 60-63
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     東京都立川市は平成24年7月1日に景観行政団体となり,同年10月1日には景観計画の運用を始めた.それに伴い,市民向けの景観セミナーを実施してきたが,平成27年度の取り組みとして小学生向けの景観教育も試みた.校舎の大規模改修の機会を活用し,卒業を控えた6年生が母校に記念として正門改修を実施することとし,全体の景観を考慮し実際に参加して塗替えまで行なった.この授業は,立川市の都市計画課及び施設課,教育委員会,小学校の校長・副校長及び6年生の担任という多くの人々の理解と協力によって行われたものであり,講義→デザイン企画→発表・投票による選定→ペンキ塗り実施,という流れで,考え方を学び,自分たちで企画し,自分たちで実際に体験するという構成の総合学習である.小学生高学年くらいの年齢で,色彩のみならず「景観」を身近なものとして学び,考え方や手法に触れることができたら,将来,生活の一部として積極的に関わり,まちづくりに貢献するものと確信した.今回の発表は,講義に携わった立場から,自治体や教育機関での取り組みを推奨するために,事例紹介を行うものである.
  • 庄 怡, 山本 早里
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 64-67
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     我々は2015年に,歴史的な街並において許容できる屋外広告物の使用面積が色相ごとに異なることを明らかにした.屋外広告物に関する条例では,広告物が面積で制限されており,デザインについてはふれられていない.広告物の地の色と文字色を同様に制限したり,地の色だけを制限されたりしている.本研究では,誘目性と調和性を考慮した屋外広告物のデザインと配色の関係を検討した.広告物の地のデザイン,地の色と文字色の配色が広告物の許容に与える影響を明らかにした. 隣り合う建物三軒からなる街並みの立面図で,中央の1件の屋外広告物のデザインと配色を変化させた43種類を三つの通りにあてはめた129枚の刺激に対し,建物の広告物の印象評価実験を行った.評価項目は誘目,調和,許容であり,被験者は41名である.得られた結果は次の通りである.1)年齢層により許容の差があった.2)広告物の形では,自然な木材の形と伝統的な枠を入れた広告物に対する許容度が比較的に高かった.3)広告物の配色では,背景色5R3/3,文字色5R6/6を使った広告物のように低彩度低明度の背景色と中明度中彩度の文字色を使った広告物の許容度が高かった.
  • 大野 治代
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 68-69
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     視覚表示として,液晶画面による動的表示が多いけれども,選挙ポスターは静的な表示として今なお使用されている.筆者は選挙ポスターの色彩調査を20余年前から実施し,今回第22回参議員選挙立候補者の選挙ポスターを調査した結果を報告する.ポスターの回収は,全立候補者222名(比例区除く)の88%(掲示のみ)である.回収したポスターの6割は色彩計で実測し,残りは現場で撮影した画像と実測したポスターと同時撮影した画像とを対照させて,色彩を検討した.色彩調査は,ポスターの色彩を13分類(N1, N5, N10, R, YR, Y, GY, G, BG, B, PB, P, RP)した結果に基づき,使用色数と色相についてまとめている.また,選挙ポスター掲示板前の視環境は,照度と色温度の測定値で示している.さらに,今回の選挙ポスターの色彩は,以前の結果と比較して使用色数が減少していること,使用頻度の高い色が赤から白色へ変化していることも述べている.
  • 網村 眞弓
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 70-73
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたり,東京マラソンのコースは過去から現在そして未来を象徴するコースに刷新されました.両コースには共通エリアが存在します.台東区エリアは,色相も豊富で中‐高彩度,構造物は丸みを帯び個性的で,親しみがあり庶民的です.一方港区エリアは,東京タワーも洗練の形状で,オフィスタワーや増上寺,公園など面積や重量感のある構造物が多く構築的で,低彩度や無彩色に近いもの,公園の樹木などの自然な色が主流です.しかし港区コースに,この色調にそぐわない大規模の歩道橋があり,景観を損ねており,他での推奨色を用いて周辺との調和を考察します. 港区には大型ホテルも多く,近隣は観光や食事処があり観戦客の夜間の外出が予想されますが,オフィスや公園の夜は人気がなく,寂しく暗い印象となります.諸外国では屋外の灯光ファニチャーやLED照明による構造物への照射が行われており,これらを参照に,世界に向け未来を創出する光によるカラー施策を考察します. 公共物やホテルの開発・リフレッシュにあたり,景観に関わる革新性と快適性の向上における色彩の寄与について考察します.
  • 牧野 暁世
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 74-76
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     持続的・自律的な社会を創生するため,地方自治体は色彩を活用した地域ブランディングを行なっている.しかし,色名のみを記述したようなカラーブランディングが各地で行われれば,地域間で同じような色彩が重複して使用され,その固有性を幅広い顧客に十分に伝達できなくなる可能性がある.そこで,地方創生のためのカラーブランディング手法の開発を目的とし,全国各地と同様に地方創生が喫緊の課題のひとつである鹿児島県を対象として検討した. 鹿児島県に対するイメージについての調査結果から,県内の様々な黒資源は,県外の人々へは十分に認知されていないことや「黒」を活用したブランディングの可能性が示唆された.そこで,シンボルカラーを「黒」とし,かごしまPR課の2名とともに,計61品目,6つのカテゴリからなる鹿児島の黒リストを作成した.次に,分光測色計または視感測色のうち,対象の性質に応じてもっとも適切な方法を用い,マンセル値及びL*a*b*値の算出を行った.その結果,色相はR~PBまで幅広く分布しており,多様な色相が示された.今後は,測色調査を継続し,県産品から景観づくりまで汎用性の高い鹿児島の黒パレットの制作を目指す.
  • Janejira Mepean, Chanprapha Phuangsuwan, Mitsuo Ikeda
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 77-78
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     Color appearance of afterimages was measured by the elementary color naming. Twenty vivid colored stimuli were presented on a display on a white background one by one and subjects judged the color, which we called the adapting color. After 10 more seconds of gazing the stimulus the subjects judged the color of the afterimage, which we called the adapted color. Apparent hue correspondence of the adapting and adapted colors was similar to the results obtained by the two rooms technique but the chromaticness of the adapted color was 20 to 40 % of the adapting color, which is much smaller than the two rooms technique. The hue correspondence was analyzed both by the opponent colors theory and the complementarity, but not satisfactory.
  • Chanprapha Phuangsuwan, Mitsuo Ikeda
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 79-80
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     It is said that the color constancy does not take place in a photograph. This research aimed to demonstrate the chromatic adaptation and consequently the color constancy on 2D photograph as a real space by utilizing a D-up viewer by using the two rooms technique. The experiment was to observe the color appearance of a test stimulus of N6; (1) in the real room, (2) in the photograph through a D-up viewer and (3) in normal viewing of 2D photograph. Five colors of illumination were investigated. Subjects perceived vivid color for N6 in the first two conditions but not for the third condition to show the chromatic adaptation to take place when subjects perceived the 3D space even in the photographs.
  • Chutipha Pipornpong, Chanprapha Phuangsuwan, Ikeda Mitsuo
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 81-82
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     The color appearance of 24 colored objects were measured by the elementary color naming under ten different illumination of LED light, D65, red, yellow, green, and blue. The apparent colors of eleven objects to cover hues were plotted on a polar diagram used in the opponent colors theory. Under the D65 light all eleven objects gave large amount of chromaticness from 60 to 80 % making a large round contour on the diagram. A similar round contour was maintained for the most of colored illuminations but for the illuminations of which chromaticity points were almost on the spectral locus of u’v’ diagram the contour shrank and shifted toward the illumination color to indicate poor color constancy. A new index of the constancy was introduced.
  • 森山 なな, 川澄 未来子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 83-85
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     本研究では,スイレンの品種改良の目標とすべき視覚イメージとそれを最大に引き出す色彩条件を日本とタイで比較し,タイのLotus Museumへ情報提供することを目指している.これまでにSD法による印象評価実験により,視覚イメージを表す形容詞間の関係性を日タイで比較した結果,第1主成分として日タイ共通で『純粋さ』,第2主成分として日本人は『快活さ』,タイ人は『シンプルさ』が現れるなど共通点と相違点を把握するとともに,各主成分を代表する6つの形容詞「純粋な」「陽気な」「ゴージャスな」「質素な」「かわいい」「暖かい」が明らかになった.本報ではこの6つの視覚イメージが最も感じられる花弁の色彩について日本人を対象に調査し,PCCS上で色相とトーンに分けて分析した.その結果,「純粋な」は白と,「陽気な」「ゴージャスな」「かわいい」「暖かい」は暖色系の色相やlightトーンと関係性が強いことや,「質素な」は色彩が1つにまとまらず,花弁の形など色彩以外の要因が影響を与えている可能性があることが明らかになった.今後はタイ人に対して同様の調査を行い,今回の日本人の結果と比較する.
  • 槙 究
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 86-89
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     シャツ・ネクタイ・スーツを様々に組み合わせた成人男性の上半身画像を撮影し,6項目の両極尺度で印象を評定させる実験を実施した.液晶プロジェクターで呈示した画像は,シャツ4種類,ネクタイ15種類,スーツ4種類の組み合わせ,計240パターンである. 18名の18歳〜22歳の女子大学生の「好きな−嫌いな」の評定値を標準化し,クラスター分析を実施した.全体を大別する2つのクラスター毎に評定平均値を算出し,3アイテムの影響を見るために質的変数を用いた重回帰分析を実施してパラメータ推定値を算出した.その結果,全体としてはネクタイの影響が「好きな−嫌いな」の印象を規定しており,シャツの影響はカラーシャツ以外は小さく,スーツ(上着)については大きく評価を規定するグループとほとんど影響しないグループに分かれた.スーツの影響が大きいグループでは,チャコールグレー,紺のスーツが,グレー,茶のスーツより好まれた.ネクタイは,オーソドックスかカジュアルかと共に,ベースの色により評価傾向が類似する傾向が見られた.組み合わせの効果(交互作用)はピンポイントで現れており,解釈は困難であった.
  • 鈴木 恒男, 井澤 尚子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 90-91
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     縦横に3個ずつ隣接されて配列された9つの黄色の丸を観察すると従来の補色残像の知見からは九つの丸い青色の残像が知覚されることが予見されるが,その残像が知覚されないで従来は報告されたことがない残像が観察された.実験では残像を知覚するための一次刺激として印刷された直径3cmの円を縦横に3個ずつ配列した5個の有彩色のパターンを使用する.結果の整理は報告された残像の形と色で分類する.形は有彩色の丸である図の形の「丸」と,丸以外の地に相当する白の形を「星」とする.色は一次刺激と「同色」か,厳密には補色ではないが,補色に近い色なので「補色」とする.この組み合わせで,従来の知見では一次刺激の形で補色残像である「丸―補色」が予測される.他の反応では地の形で一次刺激の色を表す「星―同色」の反応がある.従来の残像の知見とは異なり,一次刺激の地に相当する部分の形が一次刺激の色で知覚される新しい残像が圧倒的多数で観察された.2色型P型とD型色覚者でも新しい残像が知覚された.
  • 鄭 暁紅
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 92-94
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     本研究の研究目的は,現実の世界から得た大量の画像を利用して統計し,概念特に抽象的概念(例えば感情の概念)の主要な色彩組み合わせの法則を判明し,改良した合理的な配色プランを提案する. 研究内容には主に以下のようなことが含まれている:大量の画像を通じて具体的な概念と抽象的な概念の主要な色分布をまとめ,その上でそれに関するデータベースを構築し,検索しやすいようにする;各概念に対応する画像と色分布をデータベースに保存し,画像のメインカラーを正確に抽出し,メインカラー以外の色彩に影響される事を避ける;各種類の画像に個別差が存在する場合,科学的合理的に各概念の主要な色分布の統計方法を研究する;画像のタグが決して正確でない場合,得た画像の分類とソートの方法を研究し,画像に含まれた色情報などの複雑な情報をどう利用するかを研究する. 本研究は色彩心理学及び関係する学問に特別な意義がある.第一に,ビッグデータ時代の潮流に順応し,深層学習のアルゴリズムと結合し,大量の画像から配色プランを獲得し,より科学的な研究の結論を得る.第二に,感情など抽象的な概念は根拠のある配色を得,配色プランを科学的で信頼性の高いものにする.第三に,デザイン領域や芸術領域に応用ができる.
  • 遠藤 慎, 髙橋 武, 佐鳥 新
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 95-98
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     映像のRGB強度から生体情報を読み取ることにより,非接触で人間の心拍数の測定および感情の識別を試みる本研究は,精神作用(感情)が生体に及ぼす効果, 相関関係を明らかにし, 感情認識機能を確立するという目的に基づく. この機能は,監視カメラや車などに感情認識機能を追加することで潜在的な事故や犯罪を抑止,または防止することも可能である.加えて, 精神医療分野や,生理心理学などの分野で応用されていくことが考えられる.本講演では, 蛍光灯下で被験者をビデオカメラで撮影し,顔の動画を10FPSごとに切り出し, そのRGB画像に写るヘモグロビンやメラニンなどの人体の色素成分から,数値解析ソフトウェアMATLABを用いてプログラムを組み,人体の特徴スペクトルの抽出をおこなった.さらに,得られた特徴スペクトルを用いて心拍数の波形を求め,心拍数の時間変化を数値化(特徴量の算出)をおこなった.また,特徴量を使用し,数値解析ソフトRを用いてクラスター分析をすることにより感情の分類をおこなった.結果,情動喚起(joy, fear)においておよそ70から80%の精度で識別ができた.
  • 中矢 大輝, 遠藤 慎, 佐鳥 新, 吉田 功, 三枝 信, 伊藤 那知, 加納 正城
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 99-101
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     発症初期における大腸癌の識別は,医師による定性的な判断により行われる.本研究では,北里大学の協力のもと,初期の4段階に分類された大腸癌のうち最も識別が困難であるとされる高度異形成と癌細胞の識別をハイパースペクトルカメラにより計測し,機械学習を用いて解析を行った.使用したハイパースペクトルカメラは,北海道衛星株式会社が開発したHSC1702である.分類に用いた手法は,K近傍法,サポートベクターマシーン,ランダムフォレストである.前処理として,細胞核より抽出されたハイパースペクトルデータを主成分分析により次元削減した.第三主成分までを考慮して3手法をトレーニングを行い予測させた結果,1100以上のサンプルに対し,K近傍法では96.0%,サポートベクターマシーンでは98.1%,そしてランダムフォレストでは98.2%の精度を得た.
  • 高松 操, 石上 桂子, 乾 宏子, 丸山 眞澄, 市場 丈規, 髙橋 晋也
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 102-105
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     25名の女性の頬を測色し,分光反射率曲線と物理測色値を得た.また,510-600nmの凹み面積をヘモグロビン(Hb)影響度として算出した.同時に,「色白さ」や「色み(赤み−黄み)」,「透明感」といった肌の印象を視感評価した.Hb影響度を含む測色値と視感評価の結果を比較した結果,肌の色特有の色の見えを確認した. 明度が高い肌(L*>68)は,色相値やHb影響度に依らず「色み(赤み−黄み)」評価が中庸となり「色白」と評価された.明度が低い肌(L*<63)はHb影響度が高い場合が多く,色相は赤み寄りであったにも関わらず「色黒」で「黄み」と評価された.中明度の肌(63≦L*≦68)では,Hb影響度が高く赤み寄りの場合は「赤み」で「色白」に,Hb影響度が低く黄み寄りの場合は「黄み」で「色黒」と評価されやすかった.このように,「色白さ」は明度や白さだけでなく色相にも依存する一方,「色み(赤み−黄み)」の判断も色相だけでなく明度や白さに依存するという結果が示された. この結果から,肌の色を高明度・中明度でHb影響度が高い・中明度でHb影響度が低い・低明度の4タイプに分け,分光反射率曲線と肌印象視感評価プロフィールからその特徴をまとめた.
  • 中島 由貴, 何 水蘭, 渕田 隆義
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 106-109
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     色再現の分野では,特に顔の肌色が重視されるが,手は他人を含め自分自身の視界にも入るため肌色の変化に気づきやすい.ネイル色は肌に隣接するため肌色の見えに影響を及ぼす可能性がある.本研究では,イラストに様々な色(ネイル色)を付加した画像を用いて,肌色の色みを評価させる実験を行った.刺激形状の違い(手・楕円)が肌色の見えに及ぼす影響も併せて検討した.被験者は,モニターに提示される参照画像(ネイル色なし)の肌色の色みと比較して,テスト画像(ネイル色あり)の肌色の色みが何色に見えるかを同じ・赤み・黄み・緑み・青みから選択した.実験の結果,刺激形状(手・楕円)の違い,および肌色の種類(黄み肌,中間肌,赤み肌)によってネイル色が肌色に与える影響は異なっていた.手の場合は,ネイル色によって肌色の見えが変わり,黄み肌や赤み肌はネイル色を付加することによって元々の肌色の色みがより強調され,同化や対比では説明できないことがわかった.楕円は,肌色の種類によらずネイル色の影響が認められなかった.刺激形状の違いによってネイル色の影響に違いが生じたのは,手を想起する形状が肌色の見えに影響することを示唆している.
  • 早川 照美, 乾 宏子, 市場 丈規
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 110-113
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     本研究は日本色彩学会第47回全国大会において,パーソナルカラー診断時にドレープが肌の色の見えに及ぼす影響について反射光の影響を除いた条件で観察した研究の続編である.前大会では「黄み」のピンクと「青み」のピンクのドレープにそれぞれ同時に手を置いたときの肌の色の見えが「同化」ではなく色相対比であることを報告した.今回はブラウン,イエロー,グリーン,ブルー(肌の色の類似~補色色相)の異なるドレープに手を置いて肌の色の見えを観察した.同時に異なるドレープの間にグレイのドレープを置いて単独で手の色の見えを観察した.その結果,肌の色と類似または対照色相のイエロー,グリーンでは色相対比が観察できた.一方,ブラウンでは肌と明度対比が起こり複雑な見えをした.肌の色の補色色相であるブルーのドレープに置いた手は色相的には複雑な見えを示したが,肌の色の彩度が高く感じられたことにより補色対比が起きていることが見て取れた.このように背景色に置いた肌に起こる主な視覚効果は色票における背景色と図色の関係と類似しているが,ドレープの明度が肌の明度と著しく異なり明度対比が生じる場合には肌独特の見え方をしたことを報告する.
  • 菊池 麻実子, 五十嵐 崇訓, 佐藤 平行, 藤村 努
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 114-117
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     医療や化粧品分野においては,色素沈着や炎症等の状態評価が求められる.この評価では,メラニンやヘモグロビンを主とする皮膚内色素の定量化が不可欠である.色素の定量化法として,少数の波長における皮膚の分光吸収率を用いてメラニン・ヘモグロビン量にそれぞれ相関するインデックス値(“メラニンインデックス”,“紅斑インデックス”)を算出する手法がすでに提案され,本手法をベースとした機器が開発されるなど,広く利用されている.しかし,本手法には,メラニンインデックス値にデオキシヘモグロビンの吸収に由来する影響が含まれるなど,定量化精度における課題が指摘されてきた.本研究では,この課題を解決するため,メラニンとヘモグロビンの分離精度を向上した新たな算出式を考案した.また,色素状態の理解において,色素の空間分布を把握することが重要であるため,スペクトルカメラを用いて皮膚の分光データを空間分布として取得し,メラニンインデックスと紅斑インデックスの画像化を試みた.これにより,インデックス算出式について画像を用いた検証実験が可能となり,メラニン・紅斑インデックスの空間分布を精度よく可視化できる技術を確立した.
  • 山田 雅子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 118-120
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     肌の色については,「色黒」や「黄み」等,心的イメージが言語的に表現されることもある.山田(2017)では,男女の肌は明るさの面で明瞭に区別される一方,色みについては「中庸」との回答が大半を占めたことが報告された.本報では,「中庸」の段階を省いて新たに採取したデータを同様の方法で分析し,山田(2017)を検証した.調査においては,自分自身の現在/理想の肌の色,男女の平均的/理想的な肌の色の6種について,明るさと色みに関する回答を求めた.数値化の上,対象および平均(現在)/理想を要因とした3×2の分散分析を行った結果,いずれの属性においても両主効果が有意であり,「男性の方が女性よりも色黒で黄み」という方向性が示された.性別毎に色みが区別される傾向は新たに得られたものであり,現実の男女の色みの傾向(男性が赤み,女性が黄み)と正反対の方向性は,色票選択に基づく調査結果に重なるものでもある.更に,クラスター分析によって得られた反応パタンは,明るさについて先行研究と重なる部分が多く,分類について一定の妥当性が示された.一方の色みについては,対象によらず若干黄み寄りで一定となるパタンが最多であった.
  • 何 水蘭, 中島 由貴, 渕田 隆義
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 121-124
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     ファッション店舗においては展示方法によって,衣装から受ける印象評価は異なる.展示方法は布地の質感にも影響し,光沢布地は展示方法によっては正確な質感を認識することができない.また布地の光沢感などの質感は照明によって変化する. 本研究では,光沢,無光沢の布地(白色,赤色,青色,黄色)において,ドレープ数(平置きはドレープ無し)を変えて,白色光,赤色光,青色光の照明下でSD法による印象評価を行った.また評価サンプルがどのような材質(布,プラスチック,金属,木など)に見えるかを評価した.その主観評価結果は,なめらかさ(第1因子),重厚さ(第2因子),鮮やかさ(第3因子)で説明でき,「なめらかさ因子」は,布地の光沢,無光沢と強く関係する,「鮮やかさ因子」および「重厚さ因子」は,照明光色と強く関係する,などの結果を得た.さらに「質感」に関する主観評価は,評価サンプルの輝度変化,照明光の違い,ドレープ数の影響は小さく,布地サンプルの高輝度部分の有無だけで決定されることが明らかになった.布地であってもドレープの有無や照明光色の違いによって,金属やプラスチックなど全く異なる材質に見えることがある.
  • 吉村 由利香, 大江 猛
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 125-127
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     目的:色彩の見え方に課題がある疑似白色LEDについて,LED照明下の様々な物体色の見え方を算出した.LEDランプの演色評価数CRI値(太陽光下の色彩との一致度を表す指数)との関係についても検討した. 実験方法:疑似白色LED(試料光源)の分光分布と代表的な色彩の物体色の反射率をパラメータとして,LED光源下の物体色L*a*b*,色差⊿E*(基準光:CIE昼光,相関色温度は試料光源と同じ),物体色に対する試料光源の演色評価数CRI値を計算するプログラムを作成した. 結果:疑似白色LED下の物体色(L*a*b*)の見え方は,CIE昼光下に比べ,赤系の色彩は彩度が低下し,青系では色相が変化した.これらは青色LEDの急峻な発光ピーク波形と,黄色蛍光発光の650nm以上のエネルギーが低いことが要因と考えられた.CIE昼光とのズレ量について,⊿E*に対するCRI値を調べると,赤い色相においてCRI値が極めて低い値になった.この結果はCRI値と実際の視感との不一致さを示すもので,⊿E*が L*a*b*色空間であるのに対し,CRI値がU*V*W*色空間であることが要因と考えられた.
  • 笠原 光輝, 塚田 敦史, 池田 卓美, 青井 清一, 張 彦芳
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 128-131
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     本研究では,デザイナが水晶体混濁状態の視覚特性に配慮しながら設計が進められる支援システムの開発を目的とし,これまでにヒト水晶体の分光透過率と散乱光強度を指標に水晶体混濁眼の色覚表現法について検討した.本稿では,検討した色覚表現法の妥当性検証のために,若年者と高齢者(白内障者)に対して実施した口答および質問紙による2色対比実験について記述する.口答による実験では,まずカラーマネジメントディスプレイ上に同一の色票を提示した.一方の色票は固定とし,もう一方の色票を変化させていく.協力者には,両色票が同じに見えないと判断したタイミングを口答により回答していただく.質問紙による実験では,カラーマネジメントディスプレイ上にランダムで2つの色票を提示した.協力者には,2つの色票がどれくらい同じに見えるのかを質問紙に記載の1~6のスケールにて回答していただく(1:違って見える,6:同じに見える).他方で,片眼白内障者に協力していただき,検討した色覚表現法の評価を得た.結果として,検討した色覚表現法の妥当性を示すには至らなかったが,片眼白内障者の実験から,ほぼ見えの表現は可能であることが得られた.
  • 河本 健一郎, 川嶋 英嗣, 田淵 昭雄, 和氣 典二, 和氣 洋美
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 132-134
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     これまでに我々は,遮光眼鏡装用時の色覚特性について,色弁別および色の分類特性の観点から評価を行ってきた.今回は,これらの結果を用いて弁別特性と分類特性の対応について検討する.若年者を対象に,色弁別特性については眼科検査で用いられる,仮性同色表3種(石原表,TMC表,Lanthony tritan plates),色相配列検査3種(panel D-15, Lanthony desaturated 15-hue test, 100-hue test),及び色の確認表で測定した.また色の分類特性については,マンセル色票333枚を一枚ずつ提示し,基本色名にて応答する測定を行った. 弁別特性を示す色覚検査で,3型色覚から1, 2型色覚を示す傾向が遮光眼鏡の種類により見られたが,その際の色の分類では,色覚検査の成績に応じた,応答の一致率の変化や,応答色カテゴリー数の変化が見られた.このことは,色弁別と色分類の特性には,関連があることを直接示すと考えられ,遮光眼鏡装用時の色覚特性を検討する際に,色弁別を評価に用いる色覚検査の結果から,色の分類特性を推測できることを示唆するものである.
  • 金成 宏太, 石川 智治, 阿山 みよし
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 135-136
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     色弱者向けの画像強調システムにおける適切な色強調度を推定するために,先行研究では先天性1型及び2型色弱者の彩度知覚特性を一般色覚者と比較した(佐々木ら,日本色彩学会第46回全国大会’15).色弱者の被験者数が十分とは言えなかったので,本研究でさらに被験者数を増やした.先行研究と合わせて,1型色覚7名,2型色覚10名,一般色覚14名の被験者を得た.実験では,事前に被験者ごとに色刺激の知覚的明るさをそろえた色刺激対を用いて,その知覚的彩度差を無彩色刺激の明度差(輝度差から算出した⊿L*)でマッチングした.これまでに得られた結果(⊿L*)を,テスト有彩色対の色差(CIE1976CIELABとCIEDE2000色差式)に対してプロットしたところ,CIEDE2000色差式に対しての方が明確な傾向が表れた.先天性1型色弱者の,赤と緑系刺激対の知覚的彩度差は,一般色覚者の約60%,黄系は70%,青系は90%であった.先天性2型色弱者については,赤と緑系刺激対の知覚的彩度差は,一般色覚者の約60%,黄系と青系は80%であった.個人差が大きいので色強調度を推定に応用するためにはさらなるデータの蓄積が必要である.
  • 桂 重仁, 須長 正治
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 137-140
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     幼少期は絵を描く機会が多いことから色覚異常をもつ人の多くが,3色覚から見ると違和感のある色使いを指摘されるといった彩色に関するトラブルを経験している.このようなトラブルに対し,両親や保育士といった周囲の大人がいち早く対応するためにも,色覚異常をもつ人はどのような色を混同して塗ってしまう可能性があるかを知ることは重要である.本研究では,クレヨンを測色・解析し,2色覚にとってどのような色が混同色となりうるか,また,混同している色使いから色覚異常であるかどうかの判断ができるかを検討した.方法として,市販されている7銘柄のクレヨンを測色し,クレヨンのL*a*b*と,Brettelら(1997)による2色覚シミュレーションを適用したLMS錐体三刺激値からL*a*b*を算出した.さらに,CIELAB色空間におけるクレヨンの任意の色対に対し,3色覚に対する色差と2色覚に対する色差を用い,“混同色対指数”という新たな指標を導入した.その結果,混同色対指数が高い値を示すクレヨンの色対を混同して使っている場合,色覚異常である可能性を示す1つの判断材料となることが示唆された.
  • 菱川 優介, 桂 重仁, 須長 正治
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 141-144
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
  • 小田原 健雄, 三栖 貴行, 渡部 智樹, 一色 正男
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 145-148
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     LED照明は低消費電力化と光色制御の可能性を提案した.近年ではフルカラーシーリングライトやフルカラーLED電球の登場により,容易に空間の色環境を変化させることが可能になり,照明光色の変化が広く住環境に影響を及ぼしている.既往研究で壁紙の色で,安らぎや書面の読みやすさなどに影響を与え,さらに照明光色の変化がヒトの感情や体感温度に影響を与えることがわかっている.本研究は住宅用室内フルカラーシーリングライトを光色制御することにより,快適な生活環境と省エネルギー化を実現できるシステムの構築を目標に行っている.今回はVAS評価を行うことで有彩色光によるヒトの主観評価を行なった.同時に主観評価を裏付ける定量的な評価として,生体データをhitoeというウェアラブルの心拍計を着用することで心拍のデータの測定と,体表面温度を測定するサーモグラフィの2点を計測し,快適な照明光色を検討する.従来の研究から主観評価において影響が見られた,赤,青,シアン,黄の4色を用いて実験を行い,評価を得たので報告する.
  • 黄 峻, 水月 浩太郎, 川澄 未来子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 149-151
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     近年,アセアン市場の急成長に伴い,ユーザの感性にあった工業製品への設計ニーズが高まる中,我々はアセアン最大の自動車生産拠点であるタイにて,メーカと共同で自動車内外装に対する現地の人々の感性構造を分析してきた.現在は,SUV(Sport Utility Vehicle)やピックアップトラックのフロントグリルを対象に感性評価実験を実施し,感性構造を日タイで比較しようしている.実験方法として,車種の写真画像をA3写真紙に印刷したものを用意し,視覚的な印象を21対の形容詞を使ってSD法(7段階)で評価してもらった.先行実験ではタイ人61名に実施し,「カッコよさ」と「軽快さ」の二大成分から構成されることや,形状の特徴との関係性がわかった.今回は,日本人96名にも同じ実験を実施し,日タイのデータを比較した.その結果,「カッコよさ」「軽快さ」「単純さ」「力強さ」という共通の成分で構成されること,成分の順序や形容詞/車種の位置づけが日タイで異なることが確認できた.また,「力強さ」には表面色が,「軽快さ」にはデザインモジュールが影響を与えていることも確認できた.
  • 尾山 真一, 川澄 未来子
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 152-153
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     雑誌やカタログ上の写真画像で物体の色彩を見た時と,実空間の中でそれを見た時とでは異なる色彩に感じることがあり,池田らはこの現象を照明認識視空間という概念で説明している.我々は,D-up Viewer無しと有りの2条件で色の見えを目視評価して比較したところ,後者の方がMunsell Chromaが高くなる傾向があり,表面色が青み系の場合にはその差が小さいなどの結果も見られ,対象物の色相に応じて差が異なる可能性が示唆された.そこで今回,D-up Viewerの有無により対象物の色の見え,特にChromaにどのように差が生じるか,2条件で続けて観察し相対評価した.対象物の色相に応じて差が異なる可能性を調べるため,実験刺激は25種類のカラーバリエーションを用意した.その結果,D-up Viewer使用時はChromaが正方向に高まり,対象色が低明度,高彩度になるほど見えの差が大きくなることが確認された.さらに,色の3要素の中では対象物に明度変化を与えた場合に最も見えの差がでることも明らかになった.今後は色相の種類を増やして色相依存性をさらに詳しく調べたい.
  • 東 吉彦, 櫻井 裕司, 山添 崇
    2017 年 41 巻 3+ 号 p. 154-156
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/10/07
    ジャーナル フリー
     興奮・鎮静などの色の心理的作用を客観的に評価することを目的として,近赤外線分光法(NIRS)を用いて前頭部の脳血流変化を測定し,オキシヘモグロビンの濃度変化を指標として,脳(前頭葉)の活動状態を評価した.等輝度の赤・緑・青の有彩色刺激と輝度3段階の無彩色刺激を用いて,刺激の色相や輝度の違いによる影響を調べた.被験者は3色型色覚で視機能に異常の見られない20代男性8名と女性2名である.実験ではまず,被験者は脳血流測定装置と心拍計を装着した状態で,安静時の状態が5分間測定された.次にサイクルマシンを用いて一定量の有酸素運動を20分間行ったのち,赤,緑,青と灰色の一様な刺激および輝度2倍と2分の1の灰色刺激のいずれか1つの刺激を5分間観察した.これを1試行とし,6種類の各刺激に対して1試行が行われた.実験の結果,9人の被験者において,すべての刺激で運動時よりも血流の増加が認められ,特に赤や青では増加量が大きく興奮作用があることがわかった.また,無彩色では増加量が小さく,特に白色に近い刺激で最も小さかった.1人の被験者のみ全ての刺激で血流が減少したが,鎮静作用と判断するには至らなかった.
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